FC2ブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

第16話「尾行と襲撃」

side 明日菜


 携帯のアラームが鳴り、私にバイトの時間を告げていた。
 まだ眠かったけど、アラームを止めて起き上がった。

「うう……まだ早朝は寒いわね。厚手の下着にしとこ……」
「んあ……アスナおはよー」

 まだ眠そうなこのかに挨拶を返した。
 それから二段ベットの梯子を降り、引き出しから下着を取り出そうとした。

「あ……あれっ!? 私達の下着が一枚もないよ!?」
「あや? ウチのも~?」

 可笑しいわね……
 女子寮で下着ドロなんてありえな……ハッ!?
 まさかアイツが!? 私は犯人おこじょが眠る収納の戸を開け放った。

「姐さん、おはようございます。いやー……コレぬくぬくっスよー」

 そこには私たちの下着で暖を取るおこじょがいた。

「こ、こここ……このエロオコジョーっ!!」
「あ、姐さん……待ってくだせえ、話せばわかりますよ」
「問答無用っ!!」

 私は逃げるエロオコジョを追いかけ回し、危なくバイトに遅刻するところだった。



side 真一


「しんちゃん、この子昨日からウチらの部屋で飼うことになったんや。可愛え~やろ?」

 このちゃんはそう言ってネギ先生の肩に乗るオコジョを指差した。
 ペットに嫉妬するのもどうかと思うけど、このちゃんがこのオコジョに夢中なのが何でか面白くなかった。

「へえ、ペット飼うことにしたんだ。うーん、何か生意気そうな顔だな」
「えー、こんなに可愛え~のに……」
「いい観察眼だわ、真一君。こんなエロおこじょ、それで十分よ!」
「アスナ~、動物相手にそんなムキにならんと」
「明日菜さん、エロオコジョってどうゆうこと? そこのところ詳しく」
「聞いてよ真一君。コイツったら私達の下着を全部取り出して、布団にして寝てたのよ」

 なんて羨ま……いかんいかん。
 頭を振って雑念を飛ばした。

「なんて奴だ。追い出した方がいいんじゃないか」
「ホントよっ!! 下着ドロのオコジョなんてとんでもないペットが来たもんだわ!」
「まーまー、二人とも抑えて抑えて。きっと布の感じが好きなんやろ」
「んじゃ、ネギのパンツだっていーじゃない」
「女物やないと柔らかさがイマイチなんと違う?」

 女の子の下着って柔らかいのか~……
 触ってみた……不味い、また意識が変な方にいってしまった。

 会話に入ってこないネギ先生の方を見る。
 ネギ先生は何故か頻りにオコジョにヒソヒソと話かけている。
 どうしたんだろ?
 エヴァさんにやられて現実逃避でも始めたのかな?
 うーん……まあ、ペットだし話かけること位あるか……?

 そうして平和な会話を楽しみながらいつもの場所で別れた。



side ネギ


 学校へ着くと僕は辺りを見回した。
 ふう、エヴァンジェリンさんはいないみたいだ。

「……兄貴兄貴、さっきから何をキョロキョロしてんだよ?」
「え……いや、ちょっとね……」
「なァ~に落ち込んでんだよ? 相談にのるぜ、兄貴!!」

 カモ君ありがとう。

「じ、実はうちのクラスに問題児が……」
「おはよう、ネギ先生」
「ハッ!?」
「――今日もまったりサボらせてもらうよ。フフ、ネギ先生が担任になってから色々楽になった」
「エ……エヴァンジェリンさん、茶々丸さん!!」
「(――!? こいつは……)」
「くっ……」

 僕は警戒して杖に手を伸ばした。

「おっと……勝ち目はあるのか? 校内では大人しくしておいた方がお互いのためだと思うがな。そうそう、タカミチや学園長に助けを求めようなどと思うなよ。また生徒を襲われたりしたくはないだろ? フフフ」
「…………」

 エヴァンジェリンさんは不敵に笑い、茶々丸さんはペコリとお辞儀をして去って行った。

「うわああ~ん」
「ネギ! どうしたのよ」
「ネギの兄貴しっかりしろよ!」
「ううっ……言い返せないなんて、僕はダメ先生だ……」
「あの二人っスね!? あの二人がその問題児なんスね!? 許せねえ!! ネギの兄貴をこんなに悩ませるなんて!! 舎弟の俺っちが、ぶっちめて来てやんよぉーっ!!」
「あんた、どこのちんぴらよ……」
「……あのエヴァンッジェリンさんは実は吸血鬼なんだ……しかも真祖……」
「く……故郷くにへ帰らせていただきます……」
「コラ。さっきの勢いはどうしたのよ、エロガモ」
「――そしてあの茶々丸さんがエヴァンジェリンさんのパートナーで……僕はあの二人に惨敗して、今も狙われてるんだよ……」
「(なるほど……契約パクティオーの力を感じたのはそのせいかー)それにしてもよく生き残れたなあ、兄貴……吸血鬼の真祖って言やあ、最強クラスの化け物じゃないっスか」
「そんなにやばいの!? でも、何か魔力が弱まってるらしいのよ。次の満月までは大人しくしてるつもりらしいけど……」
「なるほどな。……フフ、でも安心しろよ。そーゆーことなら、いい手があるぜ」
「えっ!? 何かあの二人に勝つ方法があるの!?」

 僕は思わず身を乗り出して聞いていた。

「ネギの兄貴と姐さんがサクッと仮契約を交わして、相手の片一方を二人がかりでボコっちまうんだよ!」
「え……え~っ!?何それっ」
「僕とアスナさんが仮契約ーっ!?」
「姐さんの体術は見せて頂きましたよ。いいパートナーになりますぜ」
「で、でも二人がかりなんて卑怯じゃ……」
「ひきょーじゃねーよ!! 兄貴だって二人がかりでやられたんだろ!? やられたら、やり返す!! おとこの戦いは非情さ~」
「ち、ちょっと、私はイヤよ! 仮契約って昨日やってたヤツでしょ。何かチューするんでしょ!? バカみたい」
「……ああ、もしかして姐さん。中3にもなって、まだ初キッスを済ませてないとか……?」
「なっ……!?」
「フフフ……いや、これは失礼。じゃあ仮契約と言えど抵抗あるでしょーな……」
「なっ……何言ってんのよ!? チューくらい別に何でもないわよっ!! たっ、ただ何で私がパートナーとかやる必要が……」
「じゃOKということで。大丈夫、この作戦なら楽勝スよ。兄貴はどーです?」
「コ、コラ、人の話をちゃんと聞きなさい」

 ……た、確かにこのまま次の満月いなるまでやられるのを待ってるかよりは反撃した方が――
 それに、このままじゃ……僕、先生として失格だし……
 あうう……よし、決めた!!

「わ、分かった、やるよ僕!!」
「よっしゃ、そーこなくちゃ!!」
「ええ~!? 何勝手に決めてんのよー」
「お……お願いします、アスナさん。一度だけ!! 一回だけでいいですから」
「――もうっ……ほ、本当に一回だけだよ?」
「それじゃ早速……仮契約パクティオー!!」

 やっぱり、この光を浴びるとなんだかドキドキするな。
 あれ……?
 そういえば、これってアスナさんとキス……?

「ホ、ホラ……行くよ、いい?」
「は、はい……」

 目を瞑っていると、おでこに柔らかい何かが触れた。
 これがアスナさんの唇なのかな……。

「あ、姐さん。おでこはちょっと中途半端な…………」
「い、いいでしょ! 何でもーっ!!」
「えーい!とりあえず仮契約パクティオー成立!! 『神楽坂明日菜』!!」

 こうして僕達は一応仮契約を結んだ。



side エヴァンジェリン


 カポーン、とししおどしの音が茶道部の部室に響く。
 私は茶々丸の点てるお茶を飲んでいる。
 この学園都市の人間は騒がしいヤツらが多く、街自体も騒々しい。
 でも、この茶道部室の静かな雰囲気は気に入っている。

「結構なお手前で…………」

 茶々丸の入れたお茶を飲みながら、存分に静かな空気を味わった。

 茶道部の活動が終わり、茶々丸と帰路についている。
 今朝見かけた坊やの肩に乗っていたオコジョ……
 ひょっとすると、オコジョ妖精かもしれんな……・

「――ネギ・スプリングフィールドに助言者がついたかも知れん。しばらく私のそばを離れるなよ」
「……はい、マスター」
「おーい、エヴァ」

 うっ、タカミチ……。

「……何か用か?」
「…………」
「学園長がお呼びだ。一人で来いだってさ」
「――わかった、すぐ行くと伝えろ。茶々丸、すぐ戻る。必ず人目のある所を歩くんだぞ」
「…………」
「何の話だよ? また悪さじゃないだろーな?」
「うるさい、貴様には関係ないことだ」

「……お気をつけて、マスター」



 じじいに吸血行動について釘を刺された。
 チッ……少し動き辛くなったな。
 だが私の呪いを解く為だ。
 それに大停電で結界を落とせば、吸血での魔力回復は必要ない。
 私は登校地獄の呪いを必ず解いてやるぞ!
 フハハハハハ……!



side ネギ


 僕はアスナさんとカモ君と例の二人の後を付けていた。

「茶々丸って奴の方が一人になった! チャンスだぜ兄貴!! 一気にボコっちまおう!」
「ダメダメ、人目につくと不味いよ。もう少し待ってー」
「な、何か辻斬りみたいでイヤね。しかもクラスメートだし……でもまあ、アンタやまきちゃんを襲った悪い奴らなんだしね。何とかしなくちゃ。――ん?」

 そのとき茶々丸さんの歩いている前に、風船が木に引っかかったみたいで泣いている女の子がいた。
 茶々丸さんは風船を見上げると、飛び上がり風船を取った。
 取るときに木に頭をぶつけてちょっと痛そうにしていた。

「お姉ちゃん、ありがとー」

 僕達三人はその様子に開いた口が塞がらなかった。

「そ、そー言えば、茶々丸さんってどんな人なんです? 飛んだ……?」
「えーと……あれ? 私もあんまり気にしたことなかったな」
「いや、だからロボットだろ? さすが日本だよなー。ロボが学校通ってるなんてよう」
「え゛え゛え゛っ!?」
「へ、変な耳飾りだなーとは思ってたけど……・じゃ、じゃあ人間じゃないの!?茶々丸さんって!?」
「見りゃ、わかんだろぉ!?」
「い、いやーホラ……私メカって苦手だし……」
「僕も実は機械は苦手でして……」
「そーゆー問題じゃねえよぉ!? しっかりしてくれ、兄貴に姐さん」

 それから茶々丸さんは歩道橋の階段を上るのに苦労しているお婆さんを歩道橋の向こうに運んであげたり、川の真ん中を流されている仔猫の救助をしたり、と善いことばかりしていた。

「メチャクチャいい奴じゃないのーっ! しかも街の人気者だし!!」
「え……えらい!!」
「い、いや油断させる罠かもしれないぜ、兄貴」

 などと言っていると、茶々丸さんは助けた仔猫を頭に乗せて歩き始める。
 僕達はさらに尾行を続けた。
 広場に出ると茶々丸さんの周りに猫が集まってきて餌をあげていた。

「……ううっ、いい娘じゃない」
「……・いい人だ」
「ちょっ……待ってください、二人とも!! ネギの兄貴は命をねらわれたんでしょ。ホントにしっかりしてくださいよう!! とにかく人目のない今がチャンスっす! 心を鬼にして一丁ボカーっとお願いします」
「で、でもー……」
「……しょーがないわねー」

 僕達は作戦会議を始めた。



side 茶々丸


 猫に餌をあげていると後ろから物音がした。

「……こんにちは。ネギ先生、神楽坂さん。油断しました。でも、お相手はします……」
「茶々丸さん、あの、僕を狙うのはやめていただけませんか?」
「申し訳ありません、ネギ先生。私にとってマスターの命令は絶対ですので」
「ううっ、仕方ないです。……では茶々丸さん」
「……ごめんね」
「はい。神楽坂明日菜さん……いいパートナーを見つけましたね」
「行きます!! 契約執行シス・メア・パルス10秒間!! ネギの従者ミニストラ・ネギィ『神楽坂明日菜』!!!」

 正面から突っ込んできた神楽坂さんにデコピンを入れようとしたら、手を弾かれ逆にデコピンされました。

「速い! 素人とは思えない動きです。……!?」
「ラス・テル マ・スキル マギステル 光の精霊11柱、集い来たりて……」

 ネギ先生を見ると魔法の詠唱をしていたので、神楽坂さんの足を払い体勢を整えようするも、悩ましい顔したネギ先生から魔法が放つ。

「ううっ……『魔法の射手サギタ・マギカ 連弾セリエス光の11矢ルーキス』!!」
「……!! 追尾型魔法、至近弾多数……よけきれません。すみません、マスター……真一さん……もし、私が動かなくなったらネコのエサを……」

 私は着弾を覚悟して目を瞑った。

「茶々丸さん、そうゆう時は『助けて!』って言ってくれた方が嬉しいかな。神鳴流奥義 斬空掌散!!!」

 声が響き、目を開けるとそこには魔法の矢ではなく剣を携えた彼が立っていた。
スポンサーサイト

第15話「カモ登場!~仮契約の勧め~」

side ネギ


「こらーっ! ネギ坊主、もう8時よっ! いーかげん起きなさい!! あんた一応先生でしょ!? 先生が遅刻したら生徒に示しがつかないでしょーが」
「……何かカゼ引いたみたいで……」

 僕は布団を被って、仮病を使っている。
 魔力を封じられてるとはいえ、歴戦の魔法使い……
 しかもホンモノの吸血鬼だなんて……絶対に勝てないよ~!

「もー……」
「ネギ君だいじょぶ?」
「ふんっ」
「あっ」

 アスナさんに布団をはぎ取られた。
 何するんですか~……

「昨日、怖い目にあったのはわかるけどねー。先生のくせに登校拒否してどーするのよ、ホラッ!」
「ああ~ん、パンツだけは!! パンツだけは許してくださいーっ!!」

 アスナさんに無理矢理着替えさせられました。
 クスンッ……



side 真一


 昨日、桜通りからこのちゃん達を無事に部屋まで送り届けた。
 その後は念のため宮崎さんが起きるまで、このちゃんと話しながら待っていた。
 話していると程なくして宮崎さんは目を覚ました。
 目を覚ました宮崎さんは、意識もはっきりしていたし、外傷も無さそうだった。
 エヴァさんはどうやら約束を守ってくれたようだった。
 何だかんだ言っても一度した約束を破る様な人じゃないんだよな~。
 女子寮を出たときには、もう魔力の反応は感知できなかったため、探しようがないので男子寮へと戻り、一日を終えた。
 今日は、昨日このちゃんと一緒に行く約束をしたので、女子寮の前で待っている所だ。

「しんちゃん、おはよーやなー」
「おはよう……って!? 明日菜さん、何でネギ先生を担いでるの?」
「おはよー。コイツったら先生なのに仮病で登校拒否しようとしてたのよ。だから私が担いでるってわけよ」

 登校拒否ね……まあ無理もないか……
 学校に行けば、自分を狙う吸血鬼がいるわけだしな。
 それを容認している以上、俺には慰める資格はないな。

「真一さん、助けてください~」
「ダメです。先生が仮病で休むのは良くないですよ」
「そうやえ。仮病何て使わんでウチらと一緒に行こ~な~♪」
「皆こう言ってるし、このまま行くわよ!!」
「あうう~」

 かなりビビってるみたいだけど、満月過ぎたし当分はエヴァさんも何もできないんだけどな~。
 それからいつも通りダッシュで学校へと向かった。



side ネギ


「みんな、おはよーっ」
「あ~ん。ま、まだ心の準備が……・」
「おはよー。ん、ネギ君どうしたの?」

 クラスの皆さんが挨拶してくれるけど、僕の視線はエヴァンジェリンさんの席へと向かっていた。

「あ……いない……エヴァンジェリンさん……」
「――マスターは学校には来ています。すなわちサボタージュです」
「わ……わあっ!?」
「……お呼びしますか、先生?」
「い、いやとんでもない! いいです! いいですぅ!」

 あうう……
 エヴァンジェリンさんのパートナー 絡繰茶々丸さん。
 まさか自分のクラスの生徒の中に、こんなすごい二人組がいたなんてー。




キーンコーンカーン。

 はあ~……
 新学期早々、大問題が……
 やっぱり魔法使いにパートナーは必要なんだ。
 でもそんなすぐには見つかるわけないし……
 ふう……
 この中に僕の運命的なパートナーがいたらなあ……
 ハア……
 ダメかー……

 
ヒソヒソ
「な……何かネギ先生の様子がおかしいよ……?」
「う、うん。ボーッとした目で私達を見て……」
「あんな溜息ばかり……」
「ちょっと、これってもしかしてこないだの……」
「あー、あのパートナー探してるってゆー」
「ネギ先生王子説事件!?」
「じゃあ、まだ探してるの!?」
「えー! うそ♥」
「春は恋の季節やしー」


「センセー読み終わりましたー」
「えっ!? は、はい。ご苦労様です、和泉さん。えーと……あのつかぬことをお伺いしますが……和泉さんはパートナーを選ぶとして、10歳の年下の男の子なんてイヤですよね……」
「なっ……」
「えええ~! そ、そんなセンセ。ややわ急に……ウ、ウチ困ります。まだ中3になったばっかやし…………で、でもあのその……今は特にその、そういう特定の男子はいないっていうか……」
「はあ…………。――宮崎さんはどうですか?」
「へっ……ひ、ひゃはいっ! えと、そのー、わ……わたしはーあのー。あうう……わ、わわ、私はあのオオ、オケッ」
「ハイ、ネギ先生!!」
「は、はい、いいんちょさん」
「私は超OKですわ!! あぶぶ……」

 いいんちょさんを押しのけながら朝倉さんが話しかけてきた。

「――ネギ先生。ここで耳寄りな情報♡ウチのクラスは特にノー天気なのばっかだからね。大体4/5くらいの奴らは彼氏いないと思うよ。恋人が欲しいんなら20人以上の優しいお姉さんから選り取り見取りだね♥」
「えう!? いえ、別に僕、そーゆーつもりでは……!! ハハ、すみません。授業と関係ない質問しちゃって……忘れてください。何でもないですので。じゃ、今日はこの辺で……」



side out


 ネギは肩を落としながら、教室を出て行った。

「あ、ちょっとネギ――」
「ねえねえ、ホントどうしたんだろ」
「あんな元気ないネギ君、初めて見るよー」
「アスナさん、何かご存知じゃなくて?」
「いや、えーと……あの何かパートナーを見つけられなくて困ってるみたいよ。見つけられないと、何かやばい事になるみたいで……じゃあね」

そう言って明日菜はネギを追って行き、その直後教室で騒ぎが起こった。

「やっぱり噂はホントだったんだー! 王子の悩みだー」
「そっかー……ネギ君、やっぱり王子様だったんだー♥ じゃあ、やっぱり私パートナーに立候補しようかなー」
「なっ!?」
「あー私もー」
「お妃様んなったら美味しい物食べ放題かも♥」
「あ、そんなんずるいーっ!だったらボクも!!」
「私もー」
(よく考えてから発言しろよ、こいつら……)
「ネッ、ネギ先生のパートナーは私以外に考えられませんわ!!」
「私もりっこーほー!!」
「――って言ってもネギ君の気持ちもあるしねー」
「それなら私、自信あるけどなー♥」
「ななな、何ですって!?」
「私がパートナーになって、慰めてあげよっかな~」

そうして3−Aではネギ先生王子説(?)の信憑性がさらに高まり、騒ぎはドンドン大きくなっていった。



side エヴァンジェリン


「ふわ~あ……」

 昼はねむい……もう一眠りするか。
 む!? 何か来たな……
 結界を超えた者が学園都市内に入り込んだか。
 仕方ない調べるか……全く厄介な呪いだ。
 メンドクサイ……真一にも手伝わせるか……
 そう思い念話で真一を呼び出した。



side 真一


 エヴァさん人使い粗っ!!
 まだ授業中だっての!!
 かなり苦しい言い訳だったけど、何とか抜け出した。
 授業料代わりだと言われれば動かないわけには行かないよな。

 そうして今は居住エリアへ来ている。
 てか、大体の侵入地点が分かっても、この広い学園都市内で探し出すのは非常に骨が折れる。
 エヴァさんと茶々丸さんは侵入地点から内側へと捜索し、俺は寮付近から外側に向かって捜索している。

 隠れてるとしたら見つかるわけないだろー……
 とか思っていたら微かにだが、確かに魔力を感じた。
 何処だ?
 周囲を見回したが結局見つけることはできなかった。



side ネギ


「だから心配し過ぎだってばー、ネギ。あの子だって、いきなり取って喰ったりはしないって」
「そんなこと言っても—」
「とにかく今度何かあったら、私が追っ払ってやるから元気出しなさいよ」
「アスナさんは、あの人達の恐ろしさを分かってないんですよ~」

 ガボッ!!
 ななな、何ですか!?
 何も見えないよ~……
 あうう~、アスナさん助けて~。

 何処に連れて行かれるんだろうと思っっていたら、突然投げられた。

「わーん! ぷはっ!? こ、ここは……オフロ……?」
「ようこそー、ネギ先生♥」
「わああ!?」

 こ、これは?
 ネギ先生を元気づける会!?

「エヘヘ♥ ネギ君元気ないみたいだったからね。みんなでネギ君を元気づける会を開いてみたよー」
「え、みなさん……。こんな僕のためにありがとうございます」
「愛するネギ先生のためとあれば、このくらい当然ですわ」
「いいんちょさん」
「ふふ。――ところでネギ先生のパートナーの件ですが……。頭脳明晰、容姿端麗、財力豊富な私などがまさに適任かと……」
「あーっ!! いいんちょ抜け駆けずるいー」
「へぶぅ」
「ネギ君頭洗ってあげるよー」
「私背中ー」
「じゃ、私は前を……」
「それー♪ やっちゃえー」

 わ~ん。
 き、気持ちは嬉しーけど何コレー!!



side 明日菜



「ネギーッ! ちょっとネギ何処行っちゃったのよ……」
「……ほう神楽坂明日菜か」
「…………」

 ネギを探していたらエヴァちゃんと茶々丸さんに遭遇した。

「…………アンタ達! ネギを何処へやったのよ!」
「ん? 知らんぞ」
「え……」
「安心しろ神楽坂明日菜。少なくとも今は私達が坊やを襲ったりすることはないからな」
「え……? どういうこと」
「今の私では満月を過ぎると魔力がガタ落ちになる。ホラ」

 そう言って歯を見せてきた。
 確かに昨日みたいに歯が尖って無かった。

「次の満月が近づくまでは私もただの人間、坊やを攫っても血は吸えないという訳さ。それまでに坊やがパートナーを見つけられれば勝負は分からんが……。まあ魔法と戦闘の知識に長けた助言者・賢者メンターでも現れない限り無理だろうな。フフフ…………」
「な、何ですって~」
「それよりお前やけに、あの坊やの事を気に掛けるじゃないか」
「なっ!」
「子供は嫌いじゃなかったのか? 同じ布団に寝ていて情でも移ったか」
「か、関係ないでしょ! とにかくネギに手を出したら許さないからね、あんた達!!」
「フフ、まあいいがな。仕事があるので失礼するよ」
「…………」
「仕事……?」

『キャーッ♡』

 ん!?
 寮から……?
 私は声の聞こえた寮へと走り出した。



side ネギ


「ひゃあっ」
「いやん」
「やだもー、ネギ君ってば……」
「ネギ君のエッチ~、おませさん」

 え? え?
 何ですか?

「あん。もー、ネギ君そんなとこ触ってー、捕まえた!!」
「ええっ!? ぼぼ、僕何もしてませんよ!!」
「え……? じゃあ、これは……?」
「この何か太くて長い、毛むくじゃらな……」
「…………」
「キャー、ネズミーッ」
「ネズミが出たよー」

 皆さんから悲鳴が上がり、次々と水着が脱がされていった。
 ななななな、これは一体何事ー!?

「ネギ! どうしたのよ!!」
「ア、アスナさん!!」

 その時、小さい何かがアスナさんへと飛びかかった。
 スッパコーン!! とアスナさんはその何かを洗面器で撃退した。

「な、何よ今の小さいのは……」
「「「お~っ」」」

 みんなと一緒に拍手していたら、アスナさんが何かに気付いたように振り返った。

「…………。コラーッ! あんた達も素っ裸で何やってるのよー! ネギまで連れ込んでー」
「いえ、アスナさん。これは誤解っ」
「元気づける会なんだよーっ」




「ふー、また今日もドタバタな一日だったわよ……」
「でも、みんなのおかげで少し元気出ましたよ」
「へー」

「景気悪そうなカオしてるじゃんか大将、助けがいるかい?」

 そのとき誰かの声が響いた。

「だ、誰!?」
「え」
「下下!」
「あ」
「俺っちだよ、ネギの兄貴。アルベール・カモミール!! 久しぶりさー♪」
「あーっ! カモ君!!」
「へへっ、恩を返しに来たぜ兄貴」



side カモ


「――—ところで兄貴、ちっとも進んでないみたいじゃないですか」
「え? 何が?」
「パートナー選びッスよ、パートナー選び!! いいパートナー探さないと立派な魔法使いマギステル・マギになるにもカッコつかないんでしょー!?」
「うっ、実はこれから探そうと思ってたんだけど……」
「そうスか。でも俺っちがきたからには、もー大丈夫。俺っちは兄貴の姉さんに頼まれて助っ人に来たんスよーっ」
「ええっ!? 本当!?」
「も~さっき、ここの風呂場で調べてきたスけど、凄くいい素材だらけで……」
「へー、何でそんなコトわかるのよ」
「俺っちには、そういう能力があるんスよ。いけるぜ3−A!! この中にきっと兄貴のパートナーが……!!」
「カモ君のおかげでパートナー探しも楽になりそうだよ。お姉ちゃんにカモ君を寄こしてくれたお礼メール書かなくちゃ」
「あー兄貴、別にそんなの書かんでもいいって」
「え……? 何でさ?」

 やっべー!
 何とか誤魔化さねーと……

「実はさっき風呂場に居た娘達の中に『コレは!!』というパートナー候補がいたんスよ」
「えっ!? ホント!?」
「こ、この人っス。もー俺っちのセンサーもビンビンっス」
「これは……本屋ちゃん?」

 誤魔化せたか……

「兄貴も『すごくカワイイ』とか書いてまんざらでもないんじゃー」
「ち。ちがっ……そんなことないよ!! と、とにかく、しばらく考えさせてーっ」
「あ、ネギ」
「わかったっス。お早目に兄貴ー」

 フー……
 危ない危ない……

「あれ手紙が……。あ、ネギのお姉さんからのエアメールじゃない」
「!? あっ、姐さん!! その手紙、俺っちが兄貴に届けておきますよ!!」
「いいけど……?」

 手紙を届ける振りをして、ゴミ箱へと投げ捨てた。
 やばい……
 早いとこ行動起こさにゃ……



side 真一


 昨日は結局侵入者は見付からなかった。
 そして今日の放課後は学園長からの依頼で近隣の山の調査に来ている。
 調査と言っても実際は魑魅魍魎などの妖怪の殲滅だ。
 学園長の話では原因は分からいらしいが、大量に発生しているらしい。

来たれアデアットオソウジダイスキフアウオル・プールガンデイ全体アド・スンマム武装解除エクサルマティオー』!!!」
「喰らいなさい『百の影槍ケントゥム・ランケアエ・ウンプラエ』」
「止めだっ! 神鳴流奥義 斬岩剣!!!」


 俺達は愛衣ちゃんが体勢を崩し、高音さんが貫き、残敵を俺が掃討するという形で戦っていた。
 単純だが消耗が少なく、数の多い相手には効果的な戦い方だった。

 山の西部を俺と愛衣ちゃんと高音さんが見回り、東部は刹那と龍宮さん、それとついてきた楓さんが見回っている。
 広範囲に亘る調査とはいえ、あきらかに過剰戦力だと思う。
 まあ学園長の指示だからいいけどね……

「はう~、そんなに強くないですけど数多すぎますよ~」
「もうちょっとだから頑張ろう!」
「でもホントに多いですね。自然発生するとは思えない数ですわ」

 確かにいくら此処が霊地とはいえ自然発生するとは思えない数だった。
 何かが起こっているのだろうか……?



side ネギ


 僕は今、カモ君に騙され……
 もとい後押しされて、宮崎さんと向かいあっていた。

契約パクティオ—!!」
「なっ、何コレ!? 魔法陣!?」
「先生……。この光……何だかドキドキしますー……」

 あ、あれ?
 ぼ、僕も何だかドキドキしてきた……・

「これがパートナーとの『仮契約』を結ぶための魔法陣っス」
「仮契約!?」
「そう! 契約して『魔法使いの従者ミニステル・マギ』になった者は魔法使いを守り助けることになるっス。その代りに『魔法使いの従者ミニステル・マギ』は魔法使いから魔力をもらって血行促進勢力倍増!! お肌もツルツル!! 肉体的にも精神的にも大幅パワーUPでいい事ずくめって訳っスよ~」
「そ、そうなんだ」
「でも、兄貴のような子供には『本契約』はまだ出来ないし……。『魔法使いの従者ミニステル・マギ』を選ぶのはなかなか大変だし迷うものッス。そこで出てくるのが、この『仮契約』システム!! 言わばお試し期間って訳よ!」
「な、なるほど~」
「わかったっスか? じゃあ早速仮契約を! 兄貴!! 仮契約なら何人とでも結べるし、ホラ軽い気持ちでこうブチューッっと」
「ってええっ!? ブチューってキス!?」
「一番簡単な契約方法さ」
「だ、ダメだよ。それに宮崎さんだって、こんな騙したみたいな恰好で……」
「キ、キスですかー? わ、私も初めてですけど……ネギ先生がそう言うなら」
「え゛」
「それにー……私も何だか胸がドキドキしてー……」

 宮崎さんはそう言って、僕の顔の高さまで屈んで目を瞑った。
 ぼ、僕もまだキスなんてしたことないし……
 宮崎さんは僕の生徒だし~。
 あうう~……

「よ、よっしゃー! 行け~兄貴!! ホラ、ブチュー。これで俺っちも晴れて無罪放免……!」
「コラ! このエロオコジョ!!」

 ア、アスナさんっ!?



side カモ


「へぶう」

 あ、姐さん……

「あんたね~。子供をたぶらかして何しようとしてたのよ。ホラ、お姉さんからの手紙!! 見たわよ~っ!!」
「うっ」
「お姉さんに頼まれて来たなんて嘘じゃない!! ホントは悪いコトして逃げてきたんでしょ、アンターっ!!」

 ひ……ひ~っ。
 この姐さんには全てバレてる~っ!?

「しかも何コレ、下着泥棒二千枚って書いてあったわ!!」
「カモ君! どーゆーコトなの!?」
「あ、兄貴、これには訳が!俺っちは無実の罪で……」
「無実の罪……?」
「実は俺っちには病弱な妹がいまして……(以下略)……唯一頼れる人間のネギの兄貴がいる日本に来たってわけでさあ……」
「だからって何でこんなコトしたのよ」
「そ、それは手柄を立てれば兄貴に使い魔ペットとして雇って貰えると思って……マギステル・マギ候補生の使い魔ペットともなりゃあ追手も手出しは出来ねえって寸法でね」
「あ、あんたねぇ~」
「いや、すまねえ姐さん、ネギの兄貴……。尊敬するネギの兄貴を騙して利用しようなんざ、俺も地に落ちたもんさ……笑ってやってくれ。……大人しく捕まることにするよ。じゃ、あばよ」

「ま、待ってカモ君!! し、知らなかったよ……。カ、カモ君がそんな苦労を……」
「あ……兄貴!」
「わかったよカモ君!! 君をペットとして雇うよーっ」
「あ、兄貴ーッ!! い、いいんですかい。こんなスネに傷持つ俺っちなんかで」
「うん! 月給は五千円でどう!?」
「じゅ、十分でさあ、兄貴ー!!」

 ネギの兄貴……
 このアルベール・カモミール一生ついて行きやすぜーっ!!

第14話「桜通りの吸血鬼」

side 真一


『三年A組! トーコ先生ーっ!!』

 今日から新学期が始まり、教卓では刀子先生が挨拶をしている。
 生徒側は三バカデルタフォースを中心として、今年も担任が刀子先生になったのを歓喜している。
 実際は担任が転勤でもしない限りは持ち上がりなのだから、刀子先生が担任になるのは当然といえる。
 なので、正直な話そこまで喜ぶことか? という気もしなくはないが水を差すのも悪いので黙っていよう。
 あまりの騒々しさに刀子先生は早速頭を痛めているが、俺の意識は今朝のエヴァさんとの会話へと飛んでいた。



「昨日の夜、16番佐々木まき絵を襲った」
「はぁ……何してるんですか!?」
「まあ聞け。私は半年前から吸血行動を繰り返し学園都市に吸血鬼の噂が流れるようにしていたんだが……まあ、これはただの布石に過ぎんがな。それで今回サウザンドマスターの息子に私の存在を気付かせるために、佐々木まき絵には魔力の痕跡を残した。全てはネギ・スプリングフィールドを誘い出し、奴の血を吸い、私の呪いを解くためだ」
「なんで俺に話したんです?」
「真一に私の邪魔をさせないためだ。お前は今日から居住区付近の警備のシフト入ってるだろ? 知らなきゃ魔力を感じたら絶対介入しようとするだろうからな」
「う……んー、言うこと聞いてもいいですけど、約束してくれたら見逃してあげます」
「む、生意気な……まあ良い、とりあえず言ってみろ」
「殺しは禁止で、ターゲット以外も必要以上に傷つけないことかな。特に木乃香ちゃんを傷つけたら許しませんよ。破ったらお仕置きです」
「お仕置きだと……貴様何時から私にそんなことできるようになった!?」
「別荘以外では基本的に最弱状態なんだから、現実世界で今の俺に敵う訳ないでしょ」
「チッ……仕様が無いな。飲んでやる……次の訓練を覚えてろよ」
「こ、怖いこと言わないでくださいよ。たぶん大丈夫でしょうけど、一応エヴァさんも気を付けてね」
「バカが……私がヘマするわけないだろう」
「えー、でも俺と戦った時も油断して、俺にそこ衝かれてましたよね」
「あ、あれは…………ええいっ、大丈夫と言ったら大丈夫だ!」
「はいはい……」
「くーっ」

「からかわれるマスターも可愛いです(ジー)」

 つくづくからかいがいの有る人だよな。……まあ後が怖いんだけどね。
 うーん、大丈夫って言ってたけど、割と油断多いんだよな……あの人。
 ネギ先生の実力は今一分からないし、万が一に備えて待機しておくかな。



side ネギ


『3年A組! ネギ先生ーっ!』

「えと……改めまして3年A組担任になりました、ネギ・スプリングフィールドです。これから来年の3月までの一年間よろしくお願いします」

『はーい。よろしくー!』

 教卓からクラスの皆さんを見まわしてみた。
 こうして見ると、まだまだお話してない生徒さん達も一杯いるなぁ。
 この一年間で31人全員と仲良くなれるかなぁ……

 ――ん?
 何だ!?
 この鋭い視線は?
 僕は視線の主を探ってみた。
 ぞくっ……

 ――あの娘は……
 出席番号26番エヴァンジェリン・A・K・マクダウェルさん———
 囲碁部、茶道部……
 困ったときに相談しなさいってタカミチが書いてるけど……何者なんだろう?

 考えを巡らせていると、それを遮るようにノックする音が響いた。

「ネギ先生、今日は身体測定ですよ。3−Aのみんなも、すぐ準備してくださいね」

 しずな先生が身体測定を知らせに来てくれた。

「あ、そうでした。ここでですか!? わかりました、しずな先生」

 忘れてたよう……
 しずな先生に後でお礼言わなきゃな。

「で、では皆さん、身体測定ですので……えと、あのっ……今すぐ脱いで準備してください」

 あれっ!?
 クラスの皆さんが顔を赤らめてニヤニヤしてるぞ。
 何か間違えたかな?
 ハッ!?

『ネギ先生のエッチ~ッ♥』
「うわ~ん、間違えましたー」



side 明日菜


「ネギ君からかうとホント面白いよねー」
「この一年間楽しくなりそーね」
「あれー? 今日まきちゃんは?」
「……さあ?」
「まき絵は今日身体測定アルからズル休みしたと違うか?」
「まき絵、胸ぺったんこだからねー」
「お姉ちゃん、言ってて悲しくないですか?」

 ホントどうしたんだろ?
 まきちゃん昨日は元気そうだったのにな……

「ねえねえ、ところでさ最近寮で流行ってる……あのウワサどう思う?」
「え……何よソレ」
「ああ、あの桜通りの吸血鬼ね」
「えー何!? 何ソレー!?」
「何の話や?」
「知らないの? しばらく前からある噂だけど……何かねー満月の夜になると出るんだって寮の桜並木に……真っ黒なボロ布に包まれた……血まみれの吸血鬼が……」
「キ……キャーッ」

 みんなは興味深げにパルの話を聞いてる。

「まきちゃん、その謎の吸血生物にやられちゃったんじゃないかなー。血美味しそうだし」
「た、確かにまきちゃん美味しそやけど」
「いや、吸血生物じゃなくて吸血鬼」
「もー、そんな噂デタラメに決まってるでしょ。アホな事言ってないで早く並びなさいよ」
「そんなこと言ってアスナもちょっと怖いんでしょ~」
「違うわよ!あんなの日本にいるわけないでしょ」

 そう言って、私は黒板を指差した。
 黒板にはこのかが謎の生物の図解を書いてる。
 図解によると謎のチュパカブラは舌? で血を吸い、体長1~2mで凄いジャンプ力を持っているらしい。
 そんなの寮の近くにいたらビックリだわ……
 ん……?
 待てよ……
 でも、魔法使いネギがいるんだし、吸血鬼位いてもおかしくないか……?
 図書館島のこともあるしなー。

「その通りだな、神楽坂明日菜」
「え?」
「ウワサの吸血鬼はお前のような元気でイキのいい女が好きらしい、十分気を付けることだ……」
「え……!? あ、はあ」

 エヴァちゃんから話しかけてくるなんて珍しいわね。
 吸血鬼とかオカルトっぽい話好きなのかしら……
 そんなことを考えていると教室の外から亜子ちゃんの声が聞こえてきた。

『先生ーっ! 大変やーっ! まき絵が……まき絵がー」

「何!? まき絵がどーしたの!?」

 話しを聞いて私たちは保健室へと移動した。



side ネギ


 保健室に行くとまき絵さんはスヤスヤと寝ていた。
 一見外傷はないみたいだ。

「ど、どーしたんですか、まき絵さん!?」
「何か桜通りで寝てるところを見つかったらしいのよ……」

 桜通りで……?

「なんだ大したことないじゃん」
「甘酒飲んで寝てたんじゃないかなー?」
「昨日暑かったし涼んでたら、気を失ったとか……」

 ……いや、違うぞ!
 ほんの少しだけど……確かに「魔法の力」を感じる
 どういうことだろう? 僕の他にも魔法を使える人がいるのかな……?
 でも、図書館島以外でこんな力を感じたことはない……もしかしたら……!?

「ちょっとネギ、なに黙っちゃってるのよ」
「あ、はい、すみませんアスナさん。まき絵さんは心配ありません。ただの貧血かと……。それとアスナさん。僕、今日帰りが遅くなりますので、晩ご飯いりませんから」
「え……? うん」
「ええの? ごはん」

 魔法の力を持った何かがいるっていうなら、僕が皆さんを守るんだ!



side 学園長


 ワシは今魔法先生達から提出された報告書を読んでるのじゃが……
 ふむ……学園都市外部で不穏な動きありか……
 タカミチ君もおらんのに不味いのう。また大停電を狙われるんじゃなかろうか?
 じゃが大停電の日程は動かせんしのう……
 どれ……その日の警備担当は……
 んん、真一君と刹那君がおるの。
 タカミチ君がおらんのは痛いが魔法先生達とこの二人に、いざとなれば龍宮君にも応援を頼めば何とかなるかの。
 生徒に頼らなきゃならんのは、心苦しいがまた頑張ってもらわなければならんかもしれんな……。



side のどか

「吸血鬼なんてホントに出るのかなー」
「あんなのデマに決まってるです」
「だよねー。じゃあ先に帰っててね、のどかー」
「……本屋ちゃん、一人で大丈夫かな?」
「吸血鬼なんていないゆーたんアスナやろ?」


「フンフン。あ、桜通り……」

 ちょっと怖いな……

「か、風強いですねー。ちょっと急ごうかなー。こわくない~♪ ……こわくないです~。こわくないかも~♪」

 ひーん、あの噂もあるし何だか風強いし怖いよ~。

 急に強い風が吹いて、何かが落ちたような音がした。

「え……」

 物音がした方を見てみると街灯の上に噂通りの黒衣を着た何者かが立っていた。



side エヴァンジェリン


「ひ……」
「27番宮崎のどかか……悪いけど少しだけその血を分けてもらうよ」
「キャアアアアアッ」
「待て—っ」

 宮崎のどかの悲鳴を聞きつけた獲物がやってきた。
 真一と約束したから殺しはせんが、ネギ・スプリングフィールド……貴様の血を頂くとしようか。

「僕の生徒に、何をするんですかーっ!! ラス・テル マ・スキル マギステル 風の精霊11人、縛鎖となりて、敵を捕まえろ 『魔法の射手サギタ・マギカ 戒めの風矢アエール・カプトゥーラエ』!!」
「いきなりか……『氷楯レフレクシオー』」

 私は触媒を投げ、『氷楯レフレクシオー』を発動させ、奴の魔法を跳ね返した。
 だが、予想外の威力に手の指に少し傷を負ってしまった。

「僕の呪文を全部跳ね返した!?」
「驚いたぞ、凄まじい魔力だな……」
「えっ!? き、君はウチのクラスの……エヴァンジェリンさん!?」
「フフ……新学期に入ったことだし、改めて歓迎のご挨拶と行こうか、先生。……いや、ネギ・スプリングフィールド。10歳にしてこの力……さすがに奴の息子だけはある」



side ネギ


 え!? 「奴の息子」って、この人ボクのお父さんのことを知ってるのかな……?

「な、何者なんですか、あなたはっ!? 僕と同じ魔法使いのくせに何故こんなことを!?」
「この世にはいい魔法使いと悪い魔法使いがいるんだよ、ネギ先生。『氷結フリーゲランス 武装解除エクサルマティオー』!!」
「うわあっ」
抵抗レジストしたか、やはりな……」

 そ、そんな……
 エヴァンジェリンさんが犯人で、しかも魔法使いだなんて!?
 それに、いい魔法使いと悪い魔法使いがいるだって……!?
 世のため人のために働くのが魔法使いの仕事のはずだろっ!

「宮崎さん大丈夫!? ……って、わあっ」

 宮崎さんの方を見ると服が吹き飛んでいた。
 咄嗟に魔法は防御したけど、宮崎さんは守り切れてなかったよう。

「何や、今の音!?」
「あっ、ネギ!!」
「あうっ、いえあのこれは……」
「あんた……それ……・!?」

 わああああっ!?
 アスナさんにこのかさん……
 どーして此処に!?

「ネ、ネギ君が吸血鬼やったんか~!?」
「ち、違います。誤解ですー」

 あっ、エヴァンジェリンさんが逃げる!?

「ま、待てっ!!」
「え……今のは……?」
「アスナさん、このかさん。宮崎さんを頼みます! 身体に別状はありませんから。僕はこれから事件の犯人を追いますので、心配ないですから先に帰っててください」
「え、ちょっとネギ君……」
「じゃあ!」

 宮崎さんを二人に任せて、僕はエヴァンジェリンさんを追い始めた。



side 真一


 エヴァさん達の様子見ようと思ってたけど、何処で仕掛けるか聞いていなかった。
 そのため寮付近で魔力の反応を探っている所だ。
 ん……!?
 これはネギ先生の魔力……この方向……桜通りか!?
 俺は桜通りへ向かおうと走り出したが、横合いから現れた異形の魔物――鬼の奇襲を受けた。

「ガアアアアアッ」
「な!? 何でこんな寮の近くに鬼がいるんだ!?」

 鬼の棍棒による上段からの一撃を躱し、ステップを駆使して間合いを離し体勢を整えた。
 ふう……数は三匹か……
 三匹の鬼は意味を為さない咆哮を上げている。
 言語を扱えないところから、低級の鬼だとわかるが現れた場所が問題だった。
 学園都市内に侵入を許し、一番安全を確保しなければならないはずの学生の居住区にまで侵入されてしまった。
 くそっ……
 タカミチさんがいないからって、こんなに簡単に侵入を許すなよな。
 桜通りも気になるから、速攻で片づける!!
 俺は朝霧を抜き放ち、直線状に並んだ二匹に切りかかった。

「はぁ! 神鳴流秘剣 百花繚乱!!」
「グアアアアッ」

 二匹の断末魔が響き渡る。
 その直後返す刀で残る一匹を一刀のもとに切り伏せた。

 鬼の消滅を確認し、桜通りへと向かった。

 魔力を感じた場所に着くと、このちゃんと明日菜さんが気を失ってるらしい宮崎さんを介抱していた。

「二人とも何かあったの?」
「あ、真一君……そ、それが私たちが来たときにネギが裸の本屋ちゃんを抱きかかえていて、それから……」
「噂の吸血鬼———のどかを襲った犯人を追いかける言うて、もの凄い速さで走っていってもーたんや」

 とりあえず宮崎さんに上着を掛けてあげた。
 緊急事態だからか、このちゃんの激しいツッコミなどは無かったけど、流石に目のやり場に困るからな。
 聞いた話と状況証拠から簡単に整理してみる……・
 たぶんエヴァさんが宮崎さんを襲って、それを見たネギ先生が介入し、エヴァさんの『武装解除』辺りを受けた 所で、このちゃん達が現場に駆け付けた。
 その後逃げたエヴァさんをネギ先生が追いかけたって所か。

「真一君、私ネギを追うからこのかと本屋ちゃんをお願い」

そう言うと明日菜さんはネギ先生が向かった方向へと走って行ってしまった。

「それじゃあ俺達は宮崎さんを部屋まで運ぼう」
「わかったえ」

宮崎さんをおんぶして、寮へと向かった。
エヴァさん、ちゃんと約束は守ってくださいよ……



side エヴァンジェリン


「いた!」
「速い、そういえば坊やは風が得意だったな」

 追いつかれそうだったので、私は空へと飛びだした。
 魔力不足で身体能力を強化できんのが痛いな。

「待ちなさーい! エヴァンジェリンさん、どーしてこんなことするんですかー! 先生としても許しませんよー!!」
「はは、先生……奴のコトを知りたいんだろ? 奴の話を聞きたくはないのか? 私を捕まえたら教えてやるよ」
「……本当ですね」
「フフッ」
「ラス・テル マ・スキル マギステル 『風精召喚エウォカーティオ・ウァルキュリアールム剣を執る戦友コントゥベルナーリア・グラディアーリア』!!」

分身!?
いや精霊召喚か……

「『捕まえてアゲ・カピアント』!!」

 風の中位精霊による複製コピー……
 しかし8体同時召喚か!!
 なるほど、10歳とは思えん魔力だ……私は魔法薬を投げ応戦した。
 5体消滅させ、さらに突っ込んできた1体を消滅させた。

「追いつめた! これで終わりです。『風花フランス 武装解除エクサルマティオー』」
「!!」

 私は黒衣を吹き飛ばされ、下にあった建物へと着地した。

「こ、これで僕の勝ちですね。約束通り教えてもらいますよ。何でこんなことしたのか。それに……お父さんのことも」
「お前の親父……すなわち『サウザンドマスター』のことか。ふふ……」

 完全に勝ったつもりのようだな。
 ふふ……

「と、とにかく!! 魔力もなくマントも触媒もないあなたに勝ち目はないですよ!!素直に……・」
「これで勝ったつもりなのか? さあ、お前の得意な呪文を唱えてみるがいい」

 ふふ……茶々丸いいタイミングだ。行け!!

「ラス・テル マ・スキル マギステル 風の精霊11人、縛鎖となりて、敵を捕まえろ『サギ……』あたっ」

 茶々丸は一気に接近すると坊やへとデコピンを放った。
 って、デコピンってなんだ。
 茶々丸も真一との約束を守ってるということか。

「あたた? えっ、あれ!? き、君はウチのクラスの……」
「紹介しよう私のパートナー3−A出席番号10番『魔法使いの従者ミニステル・マギ』絡繰茶々丸だ」
「ええ~!? 茶々丸さんがあなたのパートナー!?」
「そうだ、パートナーのいないお前では、私には勝てんぞ」
「な……パ、パートナーくらいいなくたって……風の精霊11人……」

 坊やが魔法を詠唱しようとすると、茶々丸は間合いを詰めた。
 そして頬を抓ったり、突っ込みをいれたりして詠唱を妨害した。

「な……」
「驚いたか。元々『魔法使いの従者ミニステル・マギ』とは戦いのための道具だ。我々魔法使いは呪文詠唱中、完全に無防備となり攻撃を受ければ呪文は完成できない。そこを盾となり、剣となって守護するのが従者ミニステルの本来の使命だ。つまり、パートナーのいないお前は我々二人には勝てないということさ」
「そそそ、そんな~!? 知らなかったよ~」
「茶々丸」
「申し訳ありません、ネギ先生」
「うぐっ」
「マスターの命令ですので」
「……ふふふ。ようやく、この日が来たか。お前が学園に来てから、今日という日を待ちわびていたぞ……。お前が学園に来ると聞いてからの半年間、ひよっこ魔法使いのお前に対抗できる力をつけるため、危険を冒してまで学園生徒を襲い血を集めた甲斐があった。これで奴が私にかけた呪いも解ける……」
「え……の、呪いですか……!?」
「そうだ真祖にして最強の魔法使い、闇の世界でもおそれられた、この私がなめた苦汁――私はお前の父、つまりサウザンドマスターに敗れて以来、魔力も極限まで封じられ、も~15年間もあの教室で日本のノー天気な女子中学生と一緒にお勉強させられてるんだよ!!」
「え……そんな……僕知らな……」
「このバカげた呪いを解くには……奴の血縁たるお前の血が大量に必要なんだ。悪いがギリギリまで吸わせてもらう」
「うわあ~ん、誰か助けて~っ」

 真一と約束したからな……
 殺しはしないがギリギリまでは吸わせてもらう。

「コラーッ! この変質者ども——っ!!」
「……ん?」
「ウチの居候に何すんのよーっ!!」
「あ……」
「はぶぅっ」

 な!?
 何だ、この力は……!?
 私の障壁を突破しただと!?

「か、神楽坂明日菜!!」
「あっ、あれー?あんた達ウチのクラスの……ちょっ、どーゆーことよ!? ま、まさかアンタ達が今回の事件の犯人なの!? しかも二人掛かりで子供を虐めるような真似して――答えによってはタダじゃ済まないわよ!」
「ぐっ、よくも私の顔を足蹴にしてくれたな神楽坂明日菜……お、覚えておけよ~」

 ちっ、思わぬ邪魔が入ったが、坊やがパートナーを見つけていない今がチャンスである事には変わりない……・
 次の満月まで……いや、大停電までお預けか……
 覚悟しておきなよ、先生――いや、ネギ・スプリングフィールド。
 フハハハハハハ……!

第13話「仰せのままに、我が姫君」

side ネギ


 この春休みは鳴滝姉妹に学園案内してもらったり、いいんちょさんの家へ家庭訪問したりと色々ありました。
 春休みも今日で最終日——明日からはいよいよ新学期です。

「おまたせネギ君、目玉焼きー♥ イギリス風ブレックファストやえ」
「いただきます……うん、美味しいです! このかさん」
「モグモグ、いっふぇひまーふ」
「ホントー、ネギ君?やー、うれしーわー。アスナはいつも食べたらすぐ出かけちゃうから」
「悪かったわね」
「いえ、ホントにおいしいです。このかさん、素敵なお嫁さんになれますねー」
「もう♥ ネギ君てば」

 照れ隠しなのかな? ツッコミが時々痛いです、このかさん。
 カナヅチ何処から出したんですか?


 それから、洗濯、掃除とこのかさんのお手伝いをしました。

 掃除に洗濯、お料理も上手だしこのかさんは優しくていいなー♥
 ツッコミが時々ハードすぎるけど……
 うーん、怪力でガサツなアスナさんとは大違いだ。

「ただいまー、ちょっとネギネギ!」
「わああっ、ゴメンなさい」
「何あわててんのよ?」
「い、いえ別にっ!ど、どうかしたんですか?」

 アスナさんは帰宅すると直ぐさまボクに近づいて来て、ヒソヒソと話し始めた。

「これよ、これ! イギリスからのエアメール! 魔法学校からとか書いてあるよ。バレたらどうすんのよ、無用心ねー」
「あ、ホントだ」

『久しぶりネギ♥ 元気にしてる?』
「わあーお姉ちゃんからだ」
「わっ、何コレ! スゴッ!さすが魔法使いねー」
『ちゃんと先生になれたのね、おめでとう♥ でもこれからが本番だから、気を抜かずに頑張ってね』

 ネカネお姉ちゃんに褒められちゃった。
 嬉しいなー、エヘヘ。

『それと……ふふっ、ちょっと気が早いけど、あなたのパートナーは見つかったかしら? 魔法使いとパートナーは惹かれあうものだから、もうあなたの身近にいるかも知れないわね。フフッ、修行の期間中に素敵なパートナーが見つかることを祈ってるわ♥』
「パートナー?」
「パートナーかあ〜。やだな、お姉ちゃん。僕にはまだ早いよー」
「ちょっとぉー、何よねぎ、パートナーって……恋人のコト? ガキのくせに生意気ねー」
「えっ、いえ違いますよ。僕たち魔法使いの世界に伝わる古いお伽話で……世界を救う一人の偉大な魔法使いと、それを守り助けた一人の勇敢な戦士の話があるんです。そのお話にならって今でも社会に出て活躍する魔法使いには、それをサポートする相棒『魔法使いの従者ミニステル・マギ』と呼ばれるパートナーがいるのがいいとされます。特にマギステル・マギになるんだったら、パートナーの一人もいないと恰好つかないんですよー」
「へー……パートナーねー。それって、やっぱり女の子? てゆーか異性なの?」
「はい、やっぱり男の魔法使いだとキレイな女の人、女の魔法使いだと恰好いい男の人がいいですよねー。で、今だと大体そのパートナーと結婚しちゃう人が多いんですけどね」
「じゃ、やっぱ恋人みたいなもんじゃんー」
「へー……ネギ君、実は恋人探しに日本に来たん? じゃあ、ウチのクラスの女の子だけでも30人やからよりどりみどりやな♥」
「い、いえ、だから違うんですって……」

 あれ、アスナさんの声じゃないよーな……

「?」
「わーっ! このかさん!?」
「木乃香!? いっ、いつから聞いて……!?」
「途中からやけど、何の手紙なん、それ?」
「何でもないですよ。何でもないですよぅ」
「みんなー、ネギくん恋人探しに日本来たらしいえー♥」
「違います。本当に先生やるために来たんですよーっ!」
「スマンスマン、冗談やネギ君。アスナ、おじいちゃんがまた呼んどるから行ってくるわー」
「えー、またあの話?」
「せやー」
「夕方には戻って来るのよね?」
「大丈夫やえ。しんちゃんを夕食に招待してるんやし、ちゃんと戻って来るえ。したら行ってくるなー」

「フー、でも驚いた」
「バレたかと思いましたよ」

 このかさんが出ていき、僕は少し安心してドアを閉めた。
 だけどこの時、二人の小悪魔に話を聞かれているとは全く気付いていなかったんだ。



side out


『ネギがパートナーを探すために日本へと来た』と盗み聞いた鳴滝姉妹は、すぐに行動を開始した。

「たた、大変ですー」
「大ニュースー!ネギ先生は日本にパートナー探しに来たらしーよーっ!」
「な、何ですって!?」
「ネギ先生がパートナーを探してる!?」
「パートナーって恋人のこと?」
「結婚相手でしょー♥」
「結婚相手探すって何か、映画とかみたいだねー」
「これは噂だけど、ネギ先生は実は小国の王子で正体を隠してるらしいよー」
「えーっ! じゃあ玉の輿!!」
「おおーっ♥」
「ネギ君のパートナーは舞踏会で探すんだってー」
「おー、さすが王子ー」
「ネギ君はパートタイマーが好きみたいよ」
「ネギ先生がパーになったって」
『ネギ先生をGETできればお姫様だよー」

このように真偽不詳のまま、噂は虚実混ざって15分で領内を駆け巡った。



side 真一


俺は今エヴァさんの家へと来ている。
朝からの別荘での訓練を終えて、茶々丸さんがお茶を入れてくれるのを待っている所だ。

「別荘というのは、ダイオラマ魔法球内のことですよ」
「お前は誰に説明してるんだ」
「いやあ、何故か言わなきゃいけない気がして……」
「マスター、真一さん、お茶が入りました。どうぞ」
「ありがとう、茶々丸さん」

最近ちょっとした変化があった。
それは、どういう心境の変化かわからないけれど、茶々丸さんが俺の事を名前で呼ぶようになったことだ。
加えて、エヴァンジェリンさんがちょっと顔を赤くしてそっぽを向きながら

「私の事をエヴァと呼んでもいいぞ」

と言われたので、エヴァさんと呼ぶようになった。
少し距離が縮まった気がして嬉しい変化だった。

「オ前、最近調子イイジャネェーカ」
「チャチャゼロ達のおかげで、戦闘時の魔力運用にも大分慣れたからな」
「ソウダナ……最初ニ比ベレバマシニナッタナ」
「はい、素晴らしい上達だと思います」
「私の弟子なのだから、これ位は当然だ! ……まあ、確かにうまくはなってるがな」
「御主人ハ素直ジャネーナ」
「なっ!? チャチャゼロ、変なこと言うと魔力供給止めるぞ!」
「慌テルノハ本当ダト、認メルヨーナモンダゼ」
「慌てるマスターも新鮮です(ジー)」

初めて会ったときはこんな風に話せるようになるとは思わなかったけど、最近はこんな風に笑い合えるようになった。
こんな日常がずっと続けばいいんだけどな……。



side 木乃香


 イヤやなー。またお見合いの写真とらなあかんのやけど、正直イヤや。
 はぁ……しんちゃん今何してるやろ? 逢いたいなー……うん、電話してみよ……

prrrrr prrrrr
『もしもし、どしたの木乃香ちゃん』
「用事あったわけやないんやけど、ちょっとしんちゃんの声聞きたいと思っただけなんやけど……」
『うーん……何か俺に隠してない?』
「そんなことあらへんよ~」
『いや絶対何かあるでしょ? いつもなら声聞きたいなんて言わないでしょ。それに今日の夜は一緒にご飯食べる約束してるしさ』
「…………」
『今何処にいる?』
「……中等部の校舎やけど」
『今から、そっち行くよ。待ってて』
「え、しんちゃ……」

 切れちゃった……しんちゃんには隠し事できんなー。
 お見合い写真撮るなんて、しんちゃんに知られたくなかったんやけど……
 しんちゃんが来てくれるって聞いただけで、嬉しなってる自分もおるんや。
 昔から助けてくれるけど、ウチのことどう思っとるんやろ?

 とりあえず、しんちゃん来るんやし此処から逃げんとなー。
 黒服さんたちゴメンなー。



side ネギ


 はー、さっきは危なかったなー。
 僕が魔法使いだってことがバレたら、連れ戻されるのは確実で下手すると、オコジョにしちゃうぞって校長おじいちゃん言ってたもんな。バレないように注意しないとね。よし、パートナー探しのことはしばらく忘れよう。

 ――まずは、明日からの学校に集中だ!

『ネギ先生~~っ!!』
「はいはい……え?」
「ぜひとも私をパートナーに~~っ!!」
「私も私もネギ王子~♥」
「わあああ~っ!?」
「パートナー探してるんだって!?」
「それって恋人なの!? 結婚相手なのー!?」
「あの……舞踏会はいつ……?」
「なっ、何でみんな知ってるんですかーっ!!」

 うわあああ~!?
 逃げなきゃ!?

「先生、王子様って本当!?」
「いつも持ってる変な棒は王家の証とか〜」
「お妃にしてええ~ん♥」
「何の話ですかぁっ!?」
「あっ、逃げたぞ! 追えーっ!!」
「うわーん、やばいよーっ」

 あの角を曲がったら空に逃げよう。

「ネギ王子ー!!」
「———あれ?」
「いないよー」
「何処行った!?」
「探すのよーっ」

 うわああーん。
 どうしよう……何か、変な風に伝わってるし……
 ど、どっかに隠れないとっ……とりあえず学園エリアに逃げよう。



side 真一


 このちゃんの声に違和感を感じた俺は空を駆けて中等部の校舎近くに到達していた。
 切羽詰まった感じではなかったけど、何か気になったんだよなー。

「ありゃ? しんちゃん? 早かったなー。近くにいたん?」
「まあ、そんなとこ……」

 っ!? 着物!?
 やばいこのちゃんの着物姿可愛い過ぎるぞ。
 何処かのお姫さまだって言われても反論できんな……

「着物スゴイ似合ってるよ。でも何で着物? 今日やっぱり何かあったの?」
「ありがとなー、嬉しいえ」

『木乃香さま—!?』
『どこですかー』

「ん? あれって確か……」
「あっ、アカン。しんちゃん、ウチ逃げな……!! ウチを連れて逃げてくれん?」
「———ふふっ……仰せのままに、我が姫君」
「お願いやえ」

 冗談めかしてそう言うと、自然と笑みがこぼれた。
 このちゃんを見ると、このちゃんも笑顔になっていた。
 そうして見つからないように、その場を立ち去った。



side 明日菜


「あ、アスナさん。ネギ先生を見かけませんでしたか?」
「アスナー、ネギ王子見なかった—!?」
「見てないけど……ってネギ王子!?」
「実はネギ君は———(説明中)———(以下略)」

 あっ、頭痛いわ……
 あのネギ坊主何処で何やってるのかしら?
 はぁー……仕方ないわね。
 私しか本当の事知ってるやついないんだし、助けてやるかー。



side 真一


「え゛っ、お見合い……」
「そーなんや、おじーちゃんがお見合い趣味でな。ウチ中2やのにフィアンセとか言って、いつも無理矢理すすめられるんよ」

 あの爺……

「今日はお見合い用の写真撮らされる所やったんけど、しんちゃん来る言うし途中で逃げて来てもーた」
「そうなんだ……じゃあ俺来ない方が良かったのかな?」
「そんなことないっ!!あの時しんちゃんが来る言わんでも、ウチはたぶん逃げとったえ。そやから、しんちゃんは気にせんでええんよ。しんちゃん来てくれて嬉しいんよ」
「あ、ありがと」
「ホントはな……ウチお見合いなんてイヤなんよ。ウチのパートナーは自分で決めたいんよ……・」
「木乃香ちゃん……」
「歳、倍も離れてるおじさんとかより、しんちゃんがパートナーの方がええなー♡」///
「え……・」

 ドキドキ、と心臓の音がうるさい。
 このちゃんに聞こえそうなくらいにうるさい。
 やばいな、絶対に顔真っ赤だよ。

「そや!しんちゃんの将来のパートナーどんなんか占ったげるえ」
「え……占い?」
「うん、ウチ占い研の部長やねん」
「そういやそうだったね。図書館探検部のイメージ強過ぎて忘れてたよ」

 このちゃんの占いかぁー。
 魔力のこともあるし、何か当たりそうだよな。

「ふむふむ、なるほどー」
「どうかな?」
「しんちゃんの将来のパートナーはな……ものすごく近くにいます」
「えっ……」
「その人はこの春休みまでに仲良くなった女の子やな」
「結構いるな……」
「あら、ややなぁ♥ しんちゃん今日までにその子のパンツ見とるえ♥」
「…………(一気に減ったな)」
「んー、そしてその子は黒髪ロングの幼馴染の女の子やな♥」
「…………ん、それってまんま木乃香ちゃんでしょーが!?」
「アハハ、今のは冗談やえ」

 このちゃんは立ち上がり、俺に近づいてきた。

「でもな……ウチ……ホントにそうやったらええと思っとるんよ♥」
「このちゃん……」

 俺たちの距離は近づき……
 そして……






 ゼロにならなかった……


「わあああー!!」
「待ってよ、ネギ王子ー!!」
「わ、私をぜひともパートナーに~っ!!」
「アスナさん、何でみんなと一緒なんですかー!?」
「仕方ないでしょ!何か知らないけどみんな付いて来ちゃったんだからっ!!」
「お嬢さまー!木乃香お嬢さまー」
「あれ、このかさんと真一さん……」

 こいつら……良いところで……。

「アハハ、見つかってもーた」
「そーだね……」

「ネギ王子ー、私と私とー♥」
「わ、私もー……」
「木乃香お嬢さま、今日は逃がしませんよー」
「玉の輿だーっ!!」

 今まで縮まりそうで縮まらなかった俺とこのちゃんの距離……この先それが変わる。喧騒の中、そんな予感を俺は感じていた。

第12話「長谷川千雨の憂鬱」

side 真一


 今日は3学期の終了式。今は晴れた空の下をルームメイトの直哉と登校している所だ。

「今日は近衛さんたちと待ち合わせしてないんだ?」
「ああ。てかいつも一緒に行ってるわけじゃないし」
「そうなの?」
「直哉が朝練で早く出るときとかくらいだって……あれ、お前の部活の先輩じゃないか?」

 そう言いつつ前方を指した。

「本当だ! 英子先輩……すまん真一、ちょっと先に行くわ」
「あいよ、学校でな」

 直哉は意外と積極的なんだよな。
 もう早く告っちゃえばいいのに。
 まあ……俺に言えた事じゃないか。


 そうして一人で歩いていると、本を読みながら歩いている眼鏡を掛けた女の子がいた。

「おはよー、千雨さん」
「ん、ああ真一か、おはよー」
「明日から春休みだけど、千雨さんは何処か行ったりするの?」
「少し実家に戻るくらいで、後はいつも通りだな」

 千雨さんのいつも通りというのはネトゲやったり、コスプレして取った写真をネットにアップしたりとかだ。


 そうして話しながら歩いていると、後ろからネギ先生たちが走ってきた。

「おはようございます。えーと……長谷川さん!真一さん!」
「おはよーやね、しんちゃんに千雨ちゃん」
「おはよー」
「はよー♥ 2−Aでも、特に目立たない方の千雨ちゃんまで覚えてるなんて、教師の鑑っ」
「いえっ、あの……」

いやいや、先生なんだから生徒の名前覚えるくらい当たり前だろ。
このちゃんたちは挨拶したら、ささっと行ってしまった。

「——ったく、遅刻でもないのに、何元気に走ってんだ、あいつ……ガキかっての……」
「千雨さん本音でてるよ」
「お前しか聞いてないから、別にいいだろ」
「ホント俺の前じゃ取り繕わなくなったよね」
「ま……お前には趣味とかも知られちまってるしな。今更だろ」

 千雨さんとはこんな感じで良好な関係を築けている。



side 千雨


 現在、3学期終了式の真っ最中で、学園長先生が話している所だ。

「フォフォフォ、皆にも一応紹介しておこう——新年度から正式に本校の英語科教員になるネギ・スプリングフィールド先生じゃ。ネギ先生には4月から『3−A』を担任してもらう予定じゃ」

 なっ……何い~~っ!?
 ありえないだろ~っ!?


 とりあえず終了式も終わり教室へと戻ってきた。

「というわけで2−Aの皆さん、3年になってからもよろしくお願いしまーす!!」
「よろしくネギ先生ーっ♥」
「先生こっち向いてこっちーっ」
「ほら見て見て~っ、学年トップのトロフィー!」
「おお~っ、みんなネギ先生のおかげだねーっ」
「ネギ先生がいれば中間テストもトップ確実だーっ♥」

 えっ……!?
 何故!?

「万年ビリの2−Aがネギ先生を中心に固い団結でまとまったのが期末の勝因! クラス委員長としても鼻が高いですわ。今後とも私たちクラス一同よろしくお願いします、ネギ先生」

 ちっ……違うだろ~!?
 あのガキ何もやってないじゃん!
 つーか一日授業サボってたくせに……
 ——てかその前にそんな10歳のガキが担任教師になっていーのかよオイ!?
 労働基準法違反だろっ!? 誰か突っ込めよーっ!!

「ハイッ、先生ちょっと意見が!」
「はい、鳴滝さん」
「先生は10歳なのに先生なんて、やっぱり普通じゃないと思います」

 おっ!?
 よーしよし、やっぱそうだよな。
 やるじゃないか、双子のツリ目の方……もっと言ってやれ。

「えーと……」
「それで史伽と考えたんですけど——」
「「今日、これから全員で『学年トップおめでとうパーティー』やりませんか!?」」
「おーそりゃいいねえ!」
「やろーやろー♥じゃ、ヒマな人は寮の芝生に集合ー」

 ガクッ。
 前フリとカンケーないだろ、それはっ!?
 何、みんなで大喜びしてんだ!?
 私はこのクラスのこーゆー所にもついて行けねーんだよっ!

「——ん? どーしたんですか、長谷川さん寒気でも……?」
「いえ、別に……」



side ネギ


「——ちょっとおなかが痛いので帰宅します」
「え……あ、ちょっ……」
「ああ、千雨さんですか。いつもああですから、放っといてもいいです、ネギ先生」
「それより寮行ってパーティー始めよ、ネギ君」

 長谷川さん……
 クラスになじんでないのかな……?
 彼女も僕の生徒なんだから、なんとかしてあげたいな。



side 千雨


 あ゛ー、イライラする!?
 ホントあのノリにはついて行けねーぜ。
 メンバーにも突っ込みどころ満載だしよ……
 き、極めつけは、あの子供教師!! 10歳ってなんだよ~!?
 ムキ~ッ!! あたしの普通の学園生活を返せ~っ!!


 私の周りには常識人はアイツしかいねーのかよ。
 アイツ今何してんだろ……電話してみるかな。



side 真一


 prrrrr prrrrr
 あれ、千雨さん?
 どうしたんだろ?

『もしもし、千雨さんどうしたの?』
『……特に用があったわけじゃないんだけどさ、今どうしてるかと思ってさ』
『俺はまだ学校だよ。今、春休みの事話してるトコ』
『あのさ、今日ってヒマかな?』
『うーん、とりあえず今の所暇だけど』
『じゃあさ、今日私の部屋来ないか?』
『えっ!? 部屋って女子寮でしょ? 不味いんじゃ……』
『大丈夫だって、許可取っておくからさ。前にPC教えて欲しいって言ってたろ?』

 なんか珍しく強引だな。
 何かあったのか……まあ、どうせ暇だしいいか——。

『わかった。それじゃ帰りにそっち寄るから許可申請よろしく~』
『了解。また後でな』

 電話を切って、携帯の画面を見ると、一通のメールが来ていた。
 このちゃんからか……

『これから寮の芝生でパーティーやるんやけど、しんちゃんのクラスも一緒にやらん?』

 あれ!?
 千雨さんもこのちゃんのクラスだったよな……
 うーん……大方、クラスのノリについて行けなかったとかだろか。
 いつもぼやいてるからな……
 でも、クラスの輪からあんまり外れるのもダメだよな。
 うんっ、決めた!
 あんまりお節介焼くのも良くないだろうけど、これくらいいいよな。
 そうしてメールを返しつつ、クラスの連中に声を掛け始めた。



side 千雨


 よしっ、それじゃ準備しないとな……
 それで寮に向かおうとしたら後ろから声がかかった。

「は……長谷川さーん」

 げっ!?
 子供教師……
 こいつどうやって追いついたんだ?
 学校からの電車には乗ってなかったけど……

「何か用ですか?」
「ハァハァ、あ……あの……さっきおなか痛いって言ってたので。これ、おじいちゃんからもらった超効く胃腸薬です。おひとついかがですか……?」

 アホかこいつ……
 てか、この容器怪しすぎるんだけど。
 ドクロマーク付いてるし、ゲームなら毒状態とかのアイコンじゃねーか……

「結構です。もー治りましたので」
「あ、あのパーティーに来ないんですか……?」
「私、ああいう変人の集団とはなじめないんです。帰るので、ついて来ないでください」
「そ、そうですか? みんな普通だと思うけど……」

 どこがだよっ!?
 つーかオメーが一番変なんだよっ!!
 くっ……まずい。また、震えが……
 早く帰って真一を待とう。
 ……その前にストレス発散しとくか。
 私は寮監に申請して部屋へと向かった。

「あ、待って! やっぱり寒気がするんですか?」
「しません!」
「じゃあ、えと……ア、アルコール中毒だとか!?」
「私は未成年です!!」

 バタンッ
 よし逃げ切ったな。

 違うだろっ!
 フツーの学生生活はこうじゃないだろっ!!
 ハァハァ……
 こ、この理不尽さを社会に……大衆にうったえてやるっっ!!
 愛されるとはどーゆーことか……あのガキに教えてやるわよーっ!!


〈ちうのホームページ〉

『おハロー(*▿*)qみんな元気ー!? ——今日はと~っても嫌なことがあったよん(><)iうちのクラスの担任が変態でー!! ちうに色目使ってくるんだよう』

ちうファンHIRO > 許せねえ!何だその男?
通りすがりB > 俺らがブチのめしてやろうか、ちうタン。
アイスワールド > でも気持ちは分かるよな~。ちうタン美人だし~。

『え~?そんなことないよぉ~♥』

 フフフフ……
 ほら見なさい男ども、私のニューコスチュームを……

 よし、来た来たー!
 ネットアイドルでもぶっちぎり一位!!
 私は女王なのよ!
 いずれはNET界のNo.1カリスマとなって……
 全ての男たちが、私の前にひざまずくのよー!

 あの邪魔くさい子供教師とて同じこと、私の足元にも及ばないわ。
 くっくっくっ……
 表の世界では目立たず、騒がず、危険を冒さず、リスクの少ない裏の世界でトップを取る!

 ――それが私のスタンス!!

「———ん?」
「…………」
「ギャー!?」
「あ……スミマセン。ドア空いてたので……」

 何でコイツがここに!?
 み……見られた……!?
 私の秘密をこのガキに……!?
 あ……あああ、も、もうダメだ……
 私の秘密の趣味がバレたら学校中の生徒に後ろ指指されて笑われて――

2−A変人集団にようこそ♪変人さんいらっしゃ~い♥』

 なんてことに……くっ、消すしかない!
 もはやコイツを殺るしか。な、何か凶器、鈍器は……

 ピンポーン♪
 誰だ、こんな時に……
 って、真一か……早く着替えなきゃ。

「長谷川さん誰か来ましたよー」

 おいおい……勝手に開けるなよ!!



side 真一


 お、開いたな。

「お邪魔します、千雨さん。って、あれネギ先生!?」
「真一さんも長谷川さんに用事ですか?」
「そうですけど……っ!?」

 千雨さん……何でバニー?
 アップ用の写真でも取ってたのか?

「真一……忘れろ……つーか見るなぁー! 着替えるからちょっと出てろー!!」
「は、はいっ!ほらネギ先生も」

 ネギ先生の居る理由とかを聞いて、ちょっと協力することにした。
 そうしてネギ先生と部屋の外に出て待つこと数分——恥ずかしそうな千雨さんが部屋から顔を出した。(服装はお出かけ用っぽい私服だ)

「いいぞ、入れ」
「「お邪魔します」」
「って、何で先生まで入ってくるんだよっ!」
「いいじゃないですか。さっきから気になってたんですけど、これ長谷川さんです!? キレイですねー」

 まあまあと、千雨さんを宥めているとネギ先生が近づいてきた。

「すみません」
「あっ!? コ、コラ!私のメガネ」
「わー♥ホントにキレイ! 素顔もキレイですねー」
「俺も前言ったでしょ。素顔の方が可愛いって」
「なっ」
「さ、行きましょう、長谷川さん。みんな、すぐ下の芝生でやってますよパーティー♪」

 そう言うとネギ先生は走り始めた。

「な、何いってんだ。私のメガネ返してよー」
「えへへ、ダメですよー」
「ほら千雨さん追いかけましょ」
「うう~、真一ぃ……アイツ捕まえてよう……」

 やばい、眼鏡無しでちょっと弱気な千雨さん可愛い。
 そうしてネギ先生を追いかけながら、寮の外へと出た。



side 千雨


「でも、もったいないなー。何でそんなにキレイなのにメガネで隠してるんですか?」
「わ、私、ダメなんだよっ! メガネつけず人と会ったりするのは……それにパーティーとか嫌いだし、部屋に一人でいるのが性に合ってんだ! 返してって!」
「えー、そうなんですか? で、でも今日くらいはいいんじゃないですか? だってほら、今日はこんなにいい天気ですよ」

 え……眩しい……

「………」
「ね♥」
「………」

 何か、意地はってるのがバカらしくなってきたな。
 ま、今日くらいは変人たちに付き合ってやるのもいいか……
 2−Aの最後の日だし、それに今日は真一もいるしな♪

「ほら、行こう千雨さん」
「仕方ねーな。今日は特別だぞ」

 私たちは走り始めた、みんなのいる桜の木の下へと――



side 真一


 うちのクラスで来てるのは、いつものメンバーと数人か……
 誘ったのHR終了して、解散した後だったからこんなもんか。

「悪い悪い遅れた」
「真一遅いよ~。俺たちだけじゃ、場が持たないよ~」
「そうか……? カミやんは割と馴染んでるっぽいけどな……お前らも行けばいいだろ」
「「俺たちじゃレベル不足だよ」」

 同い年なんだから、普通に話しかければいいのにな……

「アオやん、それは一般男子生徒には意外とキツイもんだぜい」

 心を読むなよ土帝。

「ところでアオやん、さっき一緒に来たあの女の子は誰かにゃー」
「どっかで見たことある気がするんだけどなー」
「ア、アレは……」
「どうしたんだぜよ、蒼髪ピアス」
「アレはまさか……No.1ネットアイドルのちうタンやないか」

 忘れてたーっ!!
 あのホームページ見つけたの蒼髪だった!!

「え……気のせいじゃないか?」
「いいや、気のせいやない! ボクの眼は誤魔化せんでー! ちうタ~ン」

 ル〇ンジャンプ!?(服は脱いでないが)
 撃ち落とす!!

「はあああああっ」
「げぶっ!?」

 蒼髪は錐もみ回転しながら吹き飛んで行った。悪は滅びた……

「もー、ひどいやんけ。ボクやなかったらケガしてたで」
「お前タフすぎんだよっ!土帝手を貸せ!!」
「仕方ないな、アオやん奴を止めるぞっ!!」

 今、バカ蒼髪ピアスを止めるための戦いが始まった。



side 千雨


「遅れてスミマセンー」
「バ、バカ、コラ引っ張るなよ」

 な、なんでコイツこんな力が強いんだ?
 ていうか、真一は男子の方に行っちゃったし、どうすりゃいいんだよー。

「遅いよ、先生ー」
「あれー? 誰、そのカワイイ子は?」
「わー、ホントにカワイイー♥」
「まさか先生の秘密の恋人とかー?」

 やっぱり、恥ずかしいよ~。
 真一は……あのバカ私の事忘れてるんじゃないか?

「ちょっとネギ、その子もしかして…………」
「ちょっと先生!や、やっぱり返してよ、メガネ!」
「あっ……あぶ」
「ん?」
「は……は……」
「げっ……」



side 真一


 向こうが騒がしいな。
 千雨さんうまくやってるかな?
 って、ネギ先生くしゃみしそうになってるし!?

「蒼髪スマン。ハッ」

 蒼髪のタフさを信じて、思い切り吹き飛ばした。
 ネギ先生の方へ向かって――

「はくしゅ「あべしっ」」
「きゃあ!?」
「ピクピク」
「ごめんごめん、ネギ先生ケガはない?」

 ピクピクしてるし、蒼髪は放っておけば復活するだろ。
 くしゃみを物理的に止めたおかげで武装解除魔法は暴発しなかった。

「はい、僕は大丈夫です」
「びっくりしたなー、しんちゃん何やってたん?」
「ナイスよっ! 真一君」
「やっぱり真一は強いアルね。私と勝負するアルよ」
「すごーい、今の10mくらい飛んでたよ♪」
「マグレですよ、マグレ」
「あ、ありえねえ……」
「…………って、アレ? あんた長谷川じゃ……・?」
「ち、ちがっ」
「ホントだ。千雨ちゃんだーっ」
「違うっ!!長谷川なんて女は知らねーっ!!一切関係ないってばーっ」


 千雨さんも少しは馴染めたみたいだ。……馴染めてるよな?

 こうして3学期は終わり、春休みが始まった。

第11話「潜入!図書館島!! 後編」

side 真一


「キャアアアーッ」
「みんなゴメーン」

 ただ今絶賛落下中だ。
 俺はこのちゃんを抱きかかえている。
 このちゃんは俺の事を信じてくれているのか、不安そうには見えない。

 他の人はというと、楓さんと古さんは割と余裕そうだ。まあこの二人に関しては心配いらないだろう。まき絵さんは悲鳴を上げているが、何となく遊園地のジェットコースター的な悲鳴なのは、まあ気のせいだろう。明日菜さんはネギ先生を守るように抱えている。いつも子供は嫌いと言ってるけど、意外と面倒見がいいんだよな。

 落下先を見ると下の方が明るくなっていた。
 暗い穴は広く明るい空間へと繋がっていて、下には水面が迫っていた。
 俺は気で肉体強化し、このちゃんを着水の衝撃から守るようにして着水に備えた。



side ハルナ


 無線で実行部隊の皆に連絡を試みているけど、一向に繋がる気配はない。

「みんなーッ、どうしたのーっ!?」
「へ、返事してくださーい!」
「あーわわわ、どーしよどーしよ」
「誰かに連絡を……ってこんな時間じゃみんな寝てるし……」

 突然みんなとの通信が途絶えた。
 魔法の本の安置室までは順調だったのに……いったい何があったっていうのよ!?
 みんな無事でしょうね?



side 真一



 俺は着水後、このちゃんを陸地に降ろして、水へと落ちた皆を回収した。
 それから軽く周囲を見た後、一応見張りをしていた。

「うーん……」
「木乃香ちゃん、おはよー」
「おはよー。って、あれ……? ここ、どこやろ?」
「昨日英単語のトラップ間違えて、あそこから落ちてきたんだよ」
「ひゃー、あんな高いトコから落ちてきたんかー」

落ちてきた穴を指差しながら答えた。
そうして、話していると他のみんなも目覚め始めた。

「おはよー」
「おはよー……って、ここ何処よっ!?」
「昨日あそこから落ちてきたじゃないですか」
「こ、ここって図書館の中なの……?」
「たぶん、そうだと思うよ」
「あんなところから……しかも地下のハズなのに明るいよ、壁が光ってるし……」
「……ここはまさか幻の『地底図書室』!?」
「『地底図書室』?」
「何やそれ、夕映?」
「地底なのに暖かい光に満ちて、数々の貴重品にあふれた……本好きにとっては、まさに楽園という幻の図書館……」
「へー、図書室にしては広いなー」
「ただし……この図書室を見て、生きて帰った者はいないとか……」
「ええーっ!?」
「じゃ、何で夕映が知ってるアルか?」
「とにかく脱出困難であることは確かです」
「ど、どうするアルか? それでは明後日の期末テストまでに帰れないアルよ」
「それどころか私たち、このままおうちかえれないんじゃ……? あの石像みたいのもまた出るかもだし」
「とりあえず、周りには危険は無さそうだったよ。あと何故か食材付きのキッチンとかがあったな」
「そうなん? ひとまず安心やね」

 食材付きのキッチンというのには誰もツッコミを入れて来なかった。不思議に感じている俺が可笑しいのだろうか? 図書館島の地下事態がトンデモ空間だし、いちいちツッコンでたら切りもないか。
 でもここからどうやって出ようか? 飛んで一人ずつ運ぶわけにもいかないしな。まあ、それは最後の手段か……ネギ先生と協力すれば何往復もしなくて済むしな。



side ネギ



 真一さんは頼りになるなー……
 僕だって先生なんだから、もっとしっかりしなきゃ!!

「痛っ……」
「アスナさん!?」
「いや、大丈夫何でもないよ」
「肩を怪我したんですか!?」

 よ、よーしあまり得意じゃないけど治癒魔法で……
 ハッ……しまった。僕、三日間魔法を封印して、今はただの人なんだっけ。それに魔法が使えれば、この杖で外へ飛んで行けるのに……どうしよう……。
 こうなったのも引率の先生である僕の責任だ……先生である僕が、今こそみんなを勇気づけなきゃ!!

「み、皆さん、元気を出してくださいっ! 根拠はないけど、きっとすぐ帰れますよっ! あきらめないで期末に向けて勉強しておきましょう!!」
「え……」
「べ……勉強~!?」
「プッ……アハハハ、この状況で勉強アルカ—!?」
「ハ、ハイ。きっとすぐに出られますから」
「……ありがとう、ネギ君。ホントは私(とアスナ)のせいでこんなひどいことになったのに……魔法の本も取り損なっちゃったし……」
「そんなことないですよ!! 魔法の本がなくても今から頑張れば大丈夫!!」
「そうでござるな、今から勉強すれば……」
「月曜のテストまでに10点UPくらいはネ」
「俺もやっとかないと殺される……」
「しんちゃんはウチが見たるなー」
「ありがとね、でも自分の勉強を優先しなよ」
「うん。でもさっきのお礼やよ。ウチが怪我してないの、しんちゃんのおかげやろ?」
「それは気にしなくていいって、男が女の子を守るのは当然だろ」
「しんちゃん……」
「んんっ、私たちも居るんだけどなー」
「『女の子を守るのは当然だろ』だって、私も言われてみたーい」
「完全に二人の世界に入っていたでござるな」
「い、いや……今のは違「はいはい、そーゆーのは無事脱出してからやってね」
「…………」
「話を戻しますけど、幸いなことに教科書には困らないようです……」
「よーし、じゃあ早速授業を……」
「……とその前に」
「「「「探検だーっ!!」」」」
「あー、待ってください僕も……」

 パシュウッ
 一つ目の封印が解けた。
 朝日と共に解けるから……今は土曜の朝か。
 此処に来てから一日経ったんだ。
 魔法の封印が解けるまで後二日か……



side あやか


「何ですって!?」
「2−Aが最下位脱出しないとネギ先生がクビにぃいい~!?」
「ど、どーしてそんな大事なコト言わなかったんですの桜子さん」
「だって、先生に口止めされてたから~」
「とにかくみなさん! テストまでちゃんと勉強して最下位脱出ですわよ!!」

 何とかしませんとネギ先生がクビになってしまいますわ。
 阻止するためなら、この雪広あやか……何でもいたしますわ!!

「問題はアスナさん達五人組バカレンジャーですわね……とりあえずテストに出ていただいて0点さえ取らなければ……」
「みんなー大変だよーっ!!!」
「ネギ先生とバカレンジャー達が行方不明に……!!」
「え゛……」

 やっぱりダメかもしれませんわ…………



side 刀子


「それではHRを始める。っと、春日……真一はどうした?」
「それが……昨日の夜、女子中等部の近衛さんに呼び出されて出て行ってから帰って来てません」
「何ですって!?」

 真一ぃぃいい……
 貴方がダメだと私もやばいって言ったでしょうが。
 ……でも、木乃香お嬢様に呼び出されて出て行ったって……ということは、木乃香お嬢様も行方知れずなのかしら。これは学園長に確認しなきゃ駄目なようね。



side 真一


 どうやら男子校と女子校のテスト範囲は、ほとんど同じみたいで俺もネギ先生の授業を受けることになった。
 流石に天才少年と言われるだけあって頭はいいようで、授業もなかなか分かり易かった。

 それで今は日曜日で、自習という名の休憩時間中だ。

「本に囲まれて、あったかくてホント楽園やなー♥」
「一生ここにいてもいいです」
「コラーッ! 夕映も勉強しなよーっ!」

 このちゃんが本に夢中であまり相手をしてくれない……
 暇だしちょっと水浴びでもするか。二日も風呂入ってないしな。



side ネギ


 ふーむ……ずっと水に浸ってたハズの本が全く傷んでないし、この無秩序な並び……誰がこんなモノ作ったんだろ?

 お……腕の封印の二本目が消えてる。
 あと一本か……朝になれば魔法で外に帰れるぞ。

「ふーんふーん」
「あれ真一さん、こんな所で何してるんですか?」



side 真一


「ネギ先生か、二日も風呂入ってないですから、ちょっと水浴びでもしようかと思いまして……」
『ね……結構、水温かいでしょ』
「げ……」

 やべえ、先客がいやがる……

「あれ他にも誰か来てるのかな?」
「ネギ先生やばいですって……」
「え゛っ」
「「キャーッ!! ネギ君と真一君のエッチーッ!!」」
「ごめんなさーいっ!!」

 はあはあ……何とか脱出できた。
 ネギ先生は捕まったようだけど、10歳だしそんなひどいことにならないだろう。
 まき絵さんと楓さんと古さんの裸もろに見ちゃったな……
 まだ鮮明に思い出せるなぁ……

「しんちゃん、こんなとこで何やっとん?」
「ハッ、さっきの光景なんて思い出してないよ」
「……さっきの光景って何のことなん?」

 って、このちゃん怒ってる?
 何かこのちゃんの視線が下の方に……
 って、立ってるし!?
 やばい……何とかここを切り抜けねば……

「詳しく、聞かなあきまへんえ……」
「ギャーッ! とりあえずゴメンナサイ!!」

 俺は生きてここを出られるだろうか……?



side ネギ


 あー、びっくりした。
 困るなあ……僕、先生なのに……

 ザッパーン。

 近くで水音がしたけど、誰かいるのかな? アスナさんかな?
 僕は水浴びをしているアスナさんの姿に思わず息をのんだ。

「ん……誰?」

 ハッ……なななっ、何を見とれてるんだ僕は。
 こ、これじゃ覗きじゃないか。
 いけないいけない……

「こぉら、何やってんのよネギ坊主」
「ス、ス、スミマセンッ! 僕、別にのぞくつもりじゃ……・!!」
「なーにが、覗くよ。ガキのくせに」
「あっ、あれアスナさん包帯が……」
「ん」
「い、今取り替えますね!」
「えっ、いや、いいってこんなの」
「ダメですよ、アスナさん。わ、かなりひどい傷じゃないですかぁ」
「いや、だから何ともないってば。私、昔からおテンバでケガ慣れてるから」

 アスナさん、僕のせいでこんなケガしたんだ。
 迷宮ダンジョンでも僕の事かばってくれたし、考えてみれば、期末で最下位脱出しないと僕がクビになるからって図書館島に来てくれたんだよな……。

「…………」
「あの……、アスナさん……」
「あのさ、ネギ……こんな所に連れてきちゃってゴメン……実は期末で最下位だったらクラス解散の上、私たち小学生からやり直しだっていうから……」

 アスナさん何言ってるんだ?

「……は?」
「いや、だから私たちが留年って……・」
「いや、僕がクビになるってことしか聞いてないですけど……」
「…………」
「…………」
「え、ええ~っ!? 何よ、それぇ! ……てことは留年とか小学生ってのは……デマッ!?」
「た、たぶん……」
「あー、もうっ。そんなんだったら、こんな謎の図書館なんか来なかったわよ」
「ええっ!? そんなぁー」
「ったくも~。やっぱり、あんたが来てから踏んだり蹴ったりよ」
「僕だってそうですよぅ」
「あ゛……あたたたた」

 アスナさんは傷が痛んだのか僕のほうに倒れてきた。
 ドキドキ……
 な……なんだろ? む、胸がドキドキするぞ……。

「あれ……アンタどうしたの? 顔まっ赤じゃない」
「!!」
「大変、熱ある!?」
「いえ、別にっ何とも」
「何ともないってことないでしょ。こんなに赤くして」
「ほら、おデコ」

『キャアアアーッ!』

 アスナさんが僕におデコを当てたその時、佐々木さんたちの悲鳴が聞こえた。



side 真一


「しんちゃん、ちゃんと反省せなあかんえ」
「はい……」
「まきちゃん達にも謝らなあかんえ」
「はい……」

 俺はこのちゃんの説教を受けていた。
 何か、このちゃん……母さんに似てきたような気が……

『キャアアアーッ!』

 何だ!?
 この声、まき絵さん達か!?

「木乃香ちゃん、俺が見に行くから明日菜さん達を探して来て」
「ん、了解や」

 このちゃんと別れ、悲鳴のした方向へと急行した。

「大丈夫ですか!?」
「誰か、助けてーっ!」

 英単語ツイスタ—の時のゴーレムにまき絵さんが捕まっていた。

「真一殿。助太刀をお願いするでござる」
「了解」
「真一、やっぱり強いアルか」
「そういえば刀を持ってないようだが、戦えるでござるか?」
「大丈夫ですよ。神鳴流は武器を選びません……無手でも戦えます」
「うわーん! 話してないで助けてよーっ!!」

 話してる場合じゃないな……
 動こうとしたとき、ネギ先生たちがやってきた。

「まきちゃんーっ!」
「佐々木さんーっ! 僕の生徒をいじめたなっ! いくら石像ゴーレムでも許さないぞっ」

「ラス・テル マ・スキル マギステル 光の精霊11柱! 集い来たりて敵を射て!! くらえ魔法の矢!!『魔法の射手サギタ・マギカ 連弾セリエス光の11矢ルーキス』!!」

 し~ん……
 あれ? 図書館島に潜入してから、どうも動き悪いと思ってたけど……
 もしかして今魔法使えないのか!?

「「ま……まほーのや…………?」」
『ふぉふぉふぉ、ここからは出られんぞ。もう観念するのじゃ。迷宮を歩いて帰ると三日はかかるしのう~』
「み、三日!?」
「それではテストに間に合わないアル」
「み、みんなあきらめないでっ! 僕の魔法の杖で飛んでいけば一瞬だから……ハッ!?」
「こ、こらネギッ!? さっきから何モロ言ってんのよっ!?」

 何いってんだコイツ!?
 激しく突っ込みたいけど……まだ魔法使いだと知らないことになってるからできない……
 頼むからしっかりしてくれ! ネギ先生っ!!

「と、とにかくみんな逃げながら出口を探すのよっ」
『フォフォフォ、無駄じゃよ。出口はない』
「ん……? あ!! みんな、あの石像ゴーレムの首の所を見るです!」
「あっ! あれは、メル……何とかの魔法の書!?」
「本をいただきます!まき絵さん、クーフェさん、楓さん、真一さん!」
「よし、楓さんと古さんはまき絵さんをお願いします。そしたら後は俺がやります」
「「OKー、バカリーダー、真一(殿)」」
「中国武術研究会部長の力、見るアルよー♥ ハイッ!! アイ~、ヤッ!!」

 古さんは一撃目でゴーレムの足を止め、二撃目でまき絵さんを解放した。
 楓さんがゴーレムから解放されたまき絵さんを救出し、まき絵さんは器用にリボンを操り魔法の書を奪った。

「キャー♥ 魔法の本取ったよーっ!」
『ま……待つのじゃ~』
「待つのはお前だ」
『フォ』
「喰らえっ!! 神鳴流 紅蓮拳!」
『ヒ~ッ』

 俺は一撃でゴーレムを粉砕し、吹き飛ばしてしまった。
 や、やりすぎたか……

「オオ~、すごいアルよ。真一強いアルね」
「ス、スゴイ……真一さん、今のなんですか?」
「いやあ、マグレですよ」
「マグレってアンタ……」
「もう安全だと思うけど、出口探しましょう」
「そうです!あの石像ゴーレムの慌てよう、きっと何処かに地上への近道があるです」

 ふう、何とか誤魔化せたかな……
 さて、出口を探しますかね。



side ネギ


 ううっ……肝心な時に役に立てないなんて……
 まだまだ立派な魔法使いマギステル・マギは遠いな……
 それにしても、さっきの真一さん凄かったな。
 マグレって言ってたけど、マグレであんなことできるのかな?
 はぁ……・魔力さえ戻れば、この杖でビューンってすぐ外に出られるんだけど……
 でも、でもみんなに魔法がバレたら先生どころか強制帰国!
 素直に自分の足で出るしかないっ!!

「あっ、見つけた滝の裏側に非常口です!!」
「それよ!!」
『待つのじゃ~』

 わああ~……
 さっきの石像ゴーレムっ!
 胸部から上だけで追いかけてきた!!



side 真一


「キャー!早く早く中へ……」
「って、何コレ!? 扉に問題がついてる……!?」
「『問1 英語問題 read の過去分詞の発音は?』です」
「ええ~何ソレ!?」
「そんなコトいきなり言われてもー」
「ゴーレムを止めますから誰か答えてください」
「ムムッ……!? いや……ワタシ、コレわかるアルよ! 答えは[red]アルね!」
「おおっ!? 開いた~」
「みんな早く中へー!」
「もしかして、この本のパワーで!?」
「持ってるだけで頭が良くなたアル」

 開いた扉を抜け通路を抜けると、長い長い螺旋階段があった。
 これを上まで登るのか……

「え~ん、部活の練習よりキツいよーっ」

 ゴォオオオオオンッ!!
 その時ゴーレム(もはや見た目はジ〇ングみたいだ)が壁をぶち破ってきた。

『ならぬならぬ。ほ……本を返すのじゃ~っ』

 しつこいな……匍匐前進みたいな感じで追いかけてきやがる。
 それから長い追いかけっこが始まった。
 俺たちは道を塞ぐ問題を解きながら上へ上へと向かった。
 そうして一時間くらい登り続けた。

「あ……け、携帯の電波が入りました!! 地上波近いです。助けを呼ぶのでみんな頑張るのです」
「ち……地上が……!?」
「ああっ!みんな見てくださいっ!! 地上への直通エレベーターですよっ」
「こ、これで地上に帰れるの!?」
「急いで乗りましょう」
「よーし乗った!!」
「やったー、地上一階へGOや!!」

『ブーッ!!重量OVERデス』

「ええええ~っ」
「地底図書室で飲み食いしすぎたアルかー!?」
「まき絵さん。今、何キロです?」
「わ、私はやせてるよっ!それを言うならアスナとか長瀬さんの方が~」
「スペース余ってるやん根性なしのエレベーターやな」
「みんな持ってるモノとか服を捨てて!! ホラ見て、片足出すだけでブザー止まる……あとちょっとなのよ!」
「ホンマや」
「おお、脱ぐアル。脱いで軽くするアルよ」
「そうだなっ! ってあれ、木乃香ちゃん何で俺の目塞ぐの?」
「しんちゃんは見ちゃダメやよ」
「脱がすわよ~、真一君」

 くそう……
 目が見えれば周りは天国ヘブンなのに……
 ああ、誰かに服脱がされてく……何だこの展開……。

「これでどうアル!?」

『ブーッ!!重量OVERデス』

「やっぱりダメアルー」
「もー捨てるモノないよ~っ!あとちょっとなのにーっ」

『フォフォフォ、追いつめたぞよー」

 本当しつこいなコイツ。不味いな……
 俺が止めに出るとこのちゃん達の裸見ちゃって、後が怖いどうするかな。



side ネギ


 今まで僕が一番役に立ってない……
 ここは僕がやらなきゃダメだ。行くぞっ!!

「ネギ!?」
「僕が降ります!! みなさんは先に行って明日の期末を受けてください」
「ネギ、だってあんた魔法が……」

 生徒を守るんだ!!
 たとえ魔法が使えなくても僕は先生なんだから……!!

動く石像ゴーレムめっ!! 僕が相手だっ」
「ネギくーん!?」
「ネギ坊主……!」
『フォフォ、いい度胸じゃ。くらえーい』

 来るっ!! あう!?
 首誰かに引っ張られましたー……苦しいです。

「ア……アスナさん」
「あんたが先生になれるかどうかの期末試験でしょ?あんたがいないまま試験受けてもしょーがないでしょーが!ガキのくせにカッコつけて、もーバカなんだから!」
「え……でも、このままじゃ……あの石像ゴーレムに……」
「こーすんのよ! それーっ!」
「ああああーっ!? ま……魔法の本がーっ!?」

『なっ……フォ……フォ……ッフォオオオオ~!?』

『重量 OK♥』

「や、やった動いたーっ」
「脱出よ~」
「え、何!? 動いたの!? てか魔法の本捨てたの!? 俺いつまでこのまま?」
「しんちゃんは地上までこのままやえ」
「「「「「アハハハハ」」」」」

 みんな笑ってるけど本捨てちゃって良かったのかな?

 エレベーターの扉が開く。

「わ、まぶしっ」
「まあとにかく……」

『外に出れたーッ!! いえーいっ♥』

 そうして僕たちは図書館島から脱出することができた。



side 刀子


 キーンコーンカーンコーン。

 って、もう予鈴鳴ったわよ。
 真一何やってるのよ。
 ついでに春日と神条と土帝と蒼髪は……
 学園長先生の話しでは昨日戻ってきたってことだけど……
 ああ~、学園長も学園長です。こんな時期にネギ先生に試練を与えて……
 与えるだけならいいものを、生徒まで……
 それも自分の孫の木乃香お嬢様まで巻き込むなんて考えられません!
 大方、木乃香お嬢様の頼みなら真一が断るはずがないのを見越して計画だったのでしょうけど……
 今回は不味いです。
 このまま真一が来ないと私は……



side 真一


「うぉおおおおーっ! 間に合え—っ」
「あきらめたら、全部終わりだぜい」

 俺ら五人は昨日最後の悪足掻きに徹夜していた。
 そこまでは良かったんだけど、気付くともう遅刻寸前の時間で全力ダッシュしているところだ。

「はあはあ、遅れました。まだ受けられますか?」
「遅いっ! 何やってたんですか! 早く席に着きなさい!」
「おい、葛葉。遅刻者は別教室でじゃないのか」
「……そうでした。神多羅木そっちはお願いします」
「ああ、お前らはこっちだ。ついて来い」
「はいっ」

 間に合ったーっ!
 けど眠い……こいつ等の一夜漬けに付き合うんじゃなかったぜ。

「では始め。試験時間は50分だ」



side 学園長


 フォフォフォ……
 予想通りこのか達も真一君達も遅刻しおったわい。
 男子の真一君以外は余計じゃがな。
 それじゃ遅刻者たちの採点でもするかの……

「……ほう、フォフォフォ。なるほどのう~」



side ネギ


 今日、結果が出るんだな。
 僕が先生になれるかどうかの結果が……

「う~、ドキドキするー」
「まったくウチの学校は何でもお祭り騒ぎにするんだから」
「でも『最下位で小学生からやり直し』がデマでよかったです」
「発表もちょっと気が楽アルね」
「コラッ! くーふぇ、ゆえ!」
「ム、そうだたネ。そのかわりネギ坊主がクビに……」
「いえ……」
「大丈夫やて、ネギ君。みんながんばったし」
「は、はい。ありがとう、このかさん」

 そして発表が始まった。
 発表は第1位から始まり下から三番目まで終わったが2−Aの名前は無かった。

『次は下から2番目……ブービー賞です。えーと……これは……2−Kですね平均点69,5点』
「最下位確定~!?」

 終わった……
 でもしょうがないな……お姉ちゃん……今から故郷に帰ります。
 立派な魔法使いマギステル・マギになる夢はダメだったけど……
 それでも、みんながんばってくれて、嬉しかったな……

 落胆する皆さんをその場に残し、ボクは駅へと来ていた。

「こども一枚新宿まで……」
「ネギ!」

 ア、アスナさん!?

「ゴ、ゴメン!! 本当にゴメン!! 私たちのせいで最終課題落ちちゃって、魔法の本捨てたのも私だし……」
「いえ……そんなことないです。誰のせいでもないですよ」
「ネギ……」
「魔法の本何かで受かってもダメですし……結局僕が教師として未熟だったんです。クラスのみなさん、特に5人組バカレンジャーのみんなには感謝してます。短い間だけど、すごく楽しかったし」
「ちょ、ちょっと……そんな簡単にあきらめちゃうの!? マギ……なんとかになって、サウザンなんとかを探すんじゃなかったの!?」
「……さよならっ」
「あっコラ! もうっ! バカ! 行っちゃダメっていってるでしょー!! そりゃ最初はガキでバカなことばかりするから起こったけど……わたしなんかより、ちゃんと目的持って頑張ってるから感心してたんだよ! なのに……」

 アスナさん……
 ありがとうございます。
 僕の事そんな風に思ってくれていたなんて……

「ネギ坊主ーッ」
「ま、待ってーネギ君ーッ」
「み、みんな!?」
「い、いまさら会わせる顔がないです。さよならアスナさん」
「あ、ネギ!」
「それっ!」

 逃げるように走りだしたのだけど、僕の足に何かが巻き付いて転んでしまった。
 これはリボン? 佐々木さん、痛いです。

「キャー! ゴメン、ネギ君」
「ネギ先生ー」
「ひどいよーネギ君。何も言わずに行っちゃうなんて」
「ネギ君、もう一度学園長おじいちゃんに頼みに行こ、な?」
「えっ……い、いえでも最終課題は僕も納得の上でのコトですから……」
「フォフォフォ呼んだかのう?」

『学園長先生ー!?』

 何でここに!?

「いやーすまんかったの、ネギ君。実はの……遅刻組の採点をワシがやっとってのう。うっかり2−A全体と合計するのを忘れとったんじゃよ」
「え……えー、なんですかそれ!?」
「それって、つまりウチら8人分の点数入ってへんゆーコト?」
「じゃ、じゃあ……もしかするとひょっとして……2−A最下位じゃないってコトも……?」
「ではここで発表しちゃおうかの。……まずは佐々木まき絵、平均点66点よう頑張った」
「ええっ!? うそっ……66点……♥」
「次に古菲67点、長瀬楓63点、綾瀬夕映63点、早乙女ハルナ81点、宮崎のどか95点、このか91点。……最後に神楽坂明日菜71点! ようやったアスナちゃん!」

 みんなスゴイ……
 がんばりましたね。

「あ……じゃあ……!」
「うむ、これを2−Aに合計すると……平均点が81,0となり0,2の差で……なんと! 2−Aがトップじゃ!!」

『や、やったぁああーっ!!』

「え……うそ……でもそんな……ま、魔法の本がないのに、一体どうやって……!?」
「これの事かの? こんなもので簡単に頭が良くなったら苦労はせんて。こんかいのことはな……すべてみんなの実力じゃよ、実力」

 あれ!?
 魔法の本を学園長先生が持ってるってことはひょっとして……
 ツイスタ—やゴーレムとか、図書館島でのことは全部学園長先生が……?

「最終課題では、子供のネギ君が今後も先生としてやっていけるかを見たかったのじゃ……図書館島の数々のトラップにもめげず、よー頑張ったの。2−Aを学年1位にしてしまうとは、全く驚きじゃわい。合格じゃよネギ君!!これからはさらに精進じゃな」
「あ……はいっ!!」

 やったー!!
 僕……僕まだ立派な魔法使いマギステル・マギを目指せるんだ。

「アスナさん……・僕」
「ははは、良かったねネギ。……ま、とりあえず新学期からもよろしくね」
「は、はいっ……よろしくお願いします!」



side 真一


「「終わった(わ)」」
「何でや、何でボクら5人とも0点になんねん」
「こんなの絶対おかしいよ」

 クラス順位が学年最下位だったのはしょうがない……
 でも個人成績が俺ら5人全員0点ってどういうことだよ。

「遅刻者は0点ってことなのかにゃー」
「そうかもね」
「真一、今から鶴子さんに会った時の打ち合わせするわよ」
「はい、そうしましょう」

 刀子さんと口裏を合わせようとした時、教室の扉が開き学園長が入って来た。

「フォフォフォ、すまんのう遅刻者の採点はワシがしとったんじゃ」
「え……!?」
「ほれ、真一君 平均点87点じゃ。がんばったのう~」
「「フフ……フフフフ…………」」
「どうしたんじゃ二人して……・」




「「学園長先生……紛らわしいんだよ(のよ)二重ダブル・斬魔剣 弐の太刀!!! 吹き飛べぇええええーっ!!!」」

「ほぉおおおおー!!」



こうして爺さんは滅び、俺と刀子さんの危機母さんの麻帆良入りは去ったのだった。

第10話「潜入!図書館島!! 前編」

side 真一


 ネギ先生が赴任してから三週間程経った。
 この三週間にも、俺が係わっていないところで色々あったらしい。
 刹那から受けた報告から抜粋すると……

 例えば女子寮の大浴場で明日菜さんの胸部が破裂したり(刹那の見解によるとネギ先生の魔法が原因)。
 放課後、走る明日菜さんを箒で飛んで追いかけるネギ先生を目撃したり。

 などというようなことがあったらしい。

 俺の方はというと、割と平和な三週間だった。
 直哉や三バカデルタフォースとつるんだり、このちゃん達と買い物に行ったり、ちうさんとネトゲをやったり、エヴァンジェリンさんの別荘で修行したりと普通に過ごしていた。


三月に入り、徐々に温かくなってきていて、春の陽気が眠気を誘うが俺たち学生には期末テストという名の試練が近づいていた。
そして今日は期末テストを翌週に控えた金曜日で、今朝もいつも通り登校ダッシュ中だ。


「ふわ~あ、そろそろあったかくなってきたね~」
「そーですね、このかさん」
「寝むそうだね」
「んー、やっぱこの時期はちょっとなー」
「三人ともしゃべってないで走りなさいよ。遅刻するわよー」
「了解」


 普段通りの会話……暖かな春の日差しを受け、今日も平和な一日が始まる。
 この時の俺は、あのダンジョンに挑戦することになるとは夢にも思ってなかった。



side 学園長


「そうかなかなかうまくやっとるのか、ネギ君は」
「はい、学園長先生。生徒とも打ち解けていますし、授業内容も頑張っていますわ。とても10歳とは思えませんわ」

 ネギ君の指導教員のしずな先生から彼についての報告を受けておるが……
 ふむふむ、ネギ君は頑張っておるようじゃの。

「この分なら指導教員の私としても、一応合格点を出してもいいと思ってますが……」
「フォフォ、そうか。けっこうけっこう。では4月からは正式な教員として採用できるかの。ご苦労じゃったしずな君」

 んん、ではネギ君には一つ課題を与えるとしようかの。

「ただしもう一つ……彼にはもう一つ課題をクリアしてもらおうかの。才能ある立派な魔法使いマギステル・マギの候補生として……」

 噂を流して、あそこに行くよう誘導せにゃいかんのう。
 恐らくこのかも行くことになるじゃろが、このかには真一君も付いておるし大丈夫じゃろ。



side ネギ


 僕はクラスの子と教室に向かう廊下を歩いています。
 何かいつもと雰囲気が違いますね…………

「ん、何か他のクラスの皆さん、ピリピリしてますね」
「あーそうだねー」
「そろそろ中等部の期末テストが近いからね。来週の月曜からだよ、ネギ君」
「へー、学期末テストですかあ。大変だぁ……って、2−Aもそうなのでは!? のんびりしてていいんですか!」
「あはは、うちの学校エスカレーター式だから、あんまり関係ないんだ」
「特に2−Aはずーっと最下位だけど大丈夫大丈夫」

 はううっ……最下位って……
 大丈夫じゃないでしょ、あんまり!!

「あのお花みたいなトロフィーは?」
「あー、あれはテストで学年トップになったクラスが貰えるんだよ」

 そっか、2−Aは学年最下位だったのか……何とかした方がいいのかな。
 あんなトロフィー欲しいけど無理かな?
 ……無理だよなー。

「ネギ先生」
「はい、しずな先生」

 考え事してたら、僕の指導教員のしずな先生に声を掛けられた。

「あの……学園長がこれをあなたにって……」
「え……何ですか、深刻な顔して……」

 しずな先生から受け取った便箋にはこう記されていた。

『ネギ教育実習生 最終課題』

 えっ!? 僕への最終課題!?
 あわわっ!?
 今頃こんな課題が出るなんて聞いてなかったよー!?
 課題ってなんだろ? まさか、悪のドラゴン退治!? それとも攻撃魔法200個取得!?
 これをクリアしないと正式な先生にも立派な魔法使いマギステル・マギにもなれなくなっちゃうー!?
 とにかく開けてみよう……

『ねぎ君へ
  次の期末試験で、
  二‐Aが最下位脱出できたら
  正式な先生にしてあげる。

  麻帆良学園学園長 近衛近右衛門』

 なっ!?
 期末テストで最下位脱出!?

「………………な、なーんだ簡単そうじゃないですかー」
「そ……そう?」
「え~!? なになに!? どーしたのネギ君ー?」
「あー♥ ネギ君、本物の先生になるんだ!?」
「あっ、見ちゃダメですよう」

 よーし、がんばるぞ!!
 これなら何とかなりそうだ。



「みなさん聞いてください!今日のHRは大・勉強会にしたいと思います。次の期末テストは、もうすぐそこに迫ってきています。実はうちのクラスが最下位脱出できないと(僕が)大変なことになるので~、みなさん頑張って猛勉強していきましょう」
「ネギ先生、素晴らしいご提案ですわ」
「はーい♥ 提案提案」
「はい! 桜子さん」
「では!! お題は『英単語野球拳』がいいと思いまーすっ!!」

『おお~っ!あはは、それだ~』
「ちょ、皆さん!?」

 むむ……野球を取り入れた勉強法なのかな。
 ……何となく面白そうだぞ!
 よーし、ここは生徒の自主性に任せて、

「じゃあそれで行きましょう」
「え!?ちょっとネギ、あんた野球拳って何か知ってんの!?」
「ほら、アスナもこっち」


 そういえば2−Aの成績表があったっけ……それも参照しておこうかな。
 うーん、学年トップクラスが三人いるけど、他の人は割ときびしいかも。
 特にバカレンジャーの五人……
 意外とやばいかも……
 みなさんはちゃんと勉強してるでしょうか。
 

「って、な、何やってるんですかー!?」
「何ってホラ、答えられなかった人が脱いでいくんだよ」
「やっぱりこの5人が一番かーっ!集中的にきたえるよー♡」


 何て能天気な人達なんだ。こ、これは本気でマズいのかも。



side 明日菜


 やっぱりアイツ野球拳が何かわかってなかったわね。
 普通、先生が野球拳やらせるなんて、ありえないわよ~。
 目を離したら何するか分かったものじゃないわね。

「ハッ、そうだ思い出したぞ。3日間だけ、とても頭が良くなる禁断の魔法があったんだ……副作用で1か月ほどパーになるけどしかたない!! ラス・テル・マ・スキル……」
「コラーッ!! やめやめーッ!! さらっと怖いこと言わないでよ」
「あ、アスナさん……」
「なにバカやってんのよ! ちょっとこっち来なさい!」

 コイツ何かあるとスグ魔法に頼ろうとするわね……
 魔法使えるのバレたらダメなんじゃなかったの!?

「あんたねえ、いい加減魔法に頼るのやめなさいよっ!! そもそも魔法なんてものがバレたら即帰国なんでしょ? 使い過ぎっ! ヘボ魔法使いーっ!!」
「で、でもこのまま最下位だったら……ぼく、先生になれないし、立派な魔法使いマギステル・マギにも…………」
「まったくもー、本当の魔法は勇気だとか自分で言っておいて……マギ何とかを目指してるのか知らないけどさ……そんなふうに中途半端な気持ちで先生やってる奴が担任なんて、教えられる生徒だって迷惑だと思うよ!」


 って、柄にもなく偉そうなこと言っちゃったわね。
 私たちも頑張るから……だから、アンタも私たちの事信じなさいよね。
 アンタは私たちの先生なんだからさ……



side 真一


「来週は期末テストだけど、みんな大丈夫よね?」
「…………」

 今、HRで刀子先生が話している所だ。
 刀子先生の呼びかけにも関わらず、誰も返事をせずに明後日の方向を見ている。みんなテストに自信がないんだろうな。

「返事がないけど、大丈夫よね……特に真一!!」
「何で俺だけ名指しですか!?」
「鶴子さんに言われてるのよ……貴方のこと頼むわねって……だから貴方があんまりな成績取ると私もやばいのよ!!」

 それは確かにやばいな……
 ああ、昔の修行の日々を思い出すなあ……

「遠い目しないっ! 真一は当然として、みんなもテスト対策は、この週末しっかりするようにね」
『はーい、トーコ先生ーっ!!』

 こいつら……俺に矛先が向いてるからって、急に良い返事をしやがって……
 下手な点取ったらやばいぞ、お前ら……
 特に三バカデルタフォース……

「それじゃ、日直」
「起立、礼、『さようなら』」

 週末はしっかり勉強しないと駄目だな。
 赤点なんか取った日にはマジで殺されかねないぞ……



side ネギ


 アスナさんの言うとおりだ。
 それなのに僕は生徒のみんなの事も考えず自分のためだけに……
 さすがはアスナさんだ。
 安易に魔法で成績を上げようなんて甘い考えだった。
 よし期末テストまで魔法を封印しよう!
 一教師として生身で生徒にぶつかるんだ!

「ラス・テル・マ・スキル マギステル 制約の黒い三本の糸よ 我に三日間の制約を」

 よし、これで僕は三日間ただの人だ。
 正々堂々、先生として頑張るぞ~。



side 明日菜


「アスナ、アスナー、大変やー」
「何?このかー」
「お、ちょーどバカレンジャーそろっとるな♥ 実はなウワサなんやけど……次の期末で最下位を取ったクラスは……」
「えーっ!? 最下位のクラスは解散~!?」
「で、でもそんな無茶なコト……」
「ウチの学校はクラス替えなしのハズだよー」
「桜子たちが口止めされとるらしくて、詳しいコトわからへんのやけど……何か、おじ……学園長が本気で怒っとるらしいんや。ホラ、ウチらずっと最下位やし」
「そのうえ、特に悪かった人は留年!! どころか小学生からやり直しとか……」

 え!?
 もう一回ランドセルしょって、みんな仲良く集団登校……?
 いや、でも昼間ネギも言ってたし……
 もしかして『大変なコト』って、これのことじゃ……

「今のクラスけっこう面白いしバラバラになんのイヤやわー、アスナー」
「んー」
「ま、まずいね。はっきり言ってクラスの足引っ張ってるの私たち五人だし……」
「今から死ぬ気で勉強しても月曜には間に合わないアル」

 中でも一番足引っ張ってるのは私よね、ううっ……
 昼間あんなこと言っちゃったけど、やっぱりネギに頼むか……!?
 いや、でも一か月パーっていう副作用はちょっと……

「ここはやはり、アレを探すしかないかもです……」
「何かいい方法があるの?」
「『図書館島』は知っていますよね? 我が図書館探検部の活動の場所ですが……」
「う、うん。一応ね」
「あの湖に浮いてるでっかい建物でしょ?」
「実はその図書館島の深部に、読めば頭が良くなるという『魔法の本』があるらしのです」

 ま、魔法!?

「まあ、大方出来のいい参考書の類とは思うのですが、それでも手に入れば強力な武器になります」
「もー、夕映ってばアレは単なる都市伝説だし」
「ウチのクラスも変な人たち多いけど、さすがに魔法なんてこの世に存在しないよねー」
「あーアスナは、そーゆーの全然信じないんやったなー」
「いや、待って……」

 そうよ……『魔法使い』のネギがいるんだから『魔法の本』があったっておかしくないわ……!!
 私らにはこれしかない!!

「行こう!! 図書館島へ!!」



side 真一


「この裏手に私たち図書館探検部しか知らない秘密の入口があるのです」

 俺はよくわからないが、このちゃんに誘われるまま女子2−Aの面々と図書館島へと来ていた。

「あのさ俺何で呼ばれたわけ?」
「それはですね、この先はトラップ満載の危険な場所なので、やはり頼りになる方の助けが必要だからなのです」
「ごめんなー。頼りになる人ゆーたら、しんちゃんしかおらんかったんよ。お願いできんかなー?」
「んー、わかったよ。他の人の頼みなら期末もあるし断るとこだけど、木乃香ちゃんの頼みだしな」
「ありがとなー、しんちゃん♥」

 このちゃんが勢い良く抱きついてきた。
 こうゆうのが役得っていうのかな。



side 明日菜


 真一君も運動神経良いけど、やっぱりトラップは怖いわね……
 こうゆうときこそネギの魔法よね!

「ほら、ネギ出番よ! 魔法の力で私たちを守ってね」
「え、あの……魔法なら、僕封印しましたよ」
「え……えええ~っ!?」

 何で肝心な時に封印なんてしてるのよう~っ!!



side 真一


「この図書館島は明治の中頃、学園創立とともに建設された世界でも最大規模の巨大図書館です。ここには二度の大戦中、戦火を避けるべく世界各地から様々な貴重書が集められました。蔵書の増加に伴い地下に向かって増改築が繰り返され現在ではその全貌を知る者はいなくなっています。そこで、これを調査するため麻帆良大学の提唱で発足したのが私たち麻帆良学園図書館探検部なのです!」
「中・高・大合同サークルなんや♥」
「へえ、そうなんだ。綾瀬さんも解説どうもね」
「いえ、ところで私の事は名前で構いませんよ」
「そう……了解、夕映さん」
「あ、佐々木まき絵です。私の事も名前でいいですよ」
「古菲アルよ。よろしくアルね」
「はい、まき絵さんに、古さんでいいですか?」
「OKアル」
「拙者は自己紹介は必要ないでござるね」
「この前は助かりました、楓さん」
「お礼はいいでござるよ」
「何かあったアルか?」
「たいした事じゃないですよ」
「そうでござるな。でも真一殿は見事な腕前でござった」
「真一は強いアルか。私と戦うアルよ」
「ひとまずそこまでにしてくださいです」

 みんなそれぞれ自由に話しながら歩いていたが、夕映さんの制止がかかった。

「ここが図書館島地下3階……私たち中学生が入っていいのはここまでです」
「ほらほら、アスナさん。見てください、これなんかスゴく珍しい本……」
「あ、先生。貴重書狙いの盗掘者を避けるために……」

 無邪気に本棚に近づくネギ先生だが、本棚から矢が飛出し間一髪で楓さんに助けられていた。
 人の話は聞こうよ、ネギ先生……

「ワナがたくさん仕掛けられていますから、気を付けてくださいね」

 夕映さんはそう注意を促し、地上班のハルナさんと宮崎さんに連絡をとった。

「こちら夕映、地下3階に到着したです」
『了解♥ がんばってネ』
「了解」
「ところで、あの……えーと、皆さん何でこんな所に?」
「そういえば俺も聞いてないな」
「私たちは読めば頭が良くなるという『魔法の本』を探しに来たのよ」

 魔法の本だと……
 此処なら確かにあっても可笑しくないかもな。



side ネギ


「ちょっとアスナさん!魔法に頼るなって、今日自分で言ってたじゃないですか~っ!」
「こ、今回は緊急事態だしカタイこと言わず許してよ♥ このまま私たちバカレンジャーの成績が悪いと大変な事になっちゃうし……」

 大変なコト? もしかして、僕の最終試験のことかな……?
 まさか! どこかであのコトを聞いて、僕が先生になるために協力を!?
 ううっ……ありがとうバカレンジャーの皆さん……

「ねえ、夕映ちゃん。あとどれくらい歩くの?」
「はい。内緒で部室から持ってきた宝の地図によると……今いるのはここで、地下11階まで降り、地下道を進んだ先に目的の本があるようです。往復でおよそ4時間。今はまだ、夜の7時ですから……」
「ちゃんと帰って寝れるねー」
「よし……私も試験でバイト休みだし! 手に入れるわよ『魔法の本』!!」
「やっぱりココこわいよー、やめた方が……」
「大丈夫ベテランのウチらに任しときー」
「危なそうな時はフォローしますから安心してください」
「遠足気分アルねー」
「んー♥」

 うーん……
 でも、そんな都合のいい魔法書が日本の図書館なんかにあるのかなー。

「では、出発です!」
『おーっ!!』



side 真一


 『魔法の本』までの道程はなかなかの険しさだった。
 トラップでまき絵さんが落ちそうになってリボンで逃れたり(怖がってた割にいい反応だった)、落ちてきた本棚を古さんが蹴飛ばし、本の雪崩を俺と楓さんでキャッチしたり、ネギ先生がトラップでもない所で落ちそうになったり、ロッククライミングならぬ本棚クライミングしたり、匍匐前進ですすんだり(何故か俺だけ後ろ向きで進まされた)、と色々あったが何とか辿り着いた。

「す、すす、すごすぎるーっ!?」
「私こーゆーの見たことあるよ。弟のPSで♥」
「ラスボスの間アルー」

 本当に此処は何のダンジョンだ……
 奥には本を守るように石像が立っている。

「魔法の本の安置室です」
「こ、こんな場所が学校の地下に……」
「見てっ!! あそこに本が!!」
「あ、あれは!?」
「ど、どうしたのネギ!?」
「あれは伝説のメルキセデクの書ですよ! 信じられない! 僕も見るのは初めてです!!」
「てことはホンモノ……?」
「ホ、ホンモノも何も、あれは最高の魔法書ですよっ。たしかにあれなら、ちょっと頭を良くするくらいカンタンかも……」
「ネギ君、詳しいなー」

 本当にあったんだな。
 流石だぜ! 図書館島ダンジョン!!
 そして、皆が魔法書に向かって駆けていった。
 俺はこのちゃんとネギ先生と一緒に最後尾だ。

「あんなに貴重な魔法書、絶対ワナがあるにきまってます。気を付けて!!」

 ネギ先生言い切った瞬間、魔法書までの通路が無くなり、全員下へ落ちた。
 俺は咄嗟にこのちゃんを抱きかかえて着地する。流石と言うべきか、何事もなかったかのように皆無事だった。

「木乃香ちゃん大丈夫?」
「うん。しんちゃんが支えてくれはったから平気や」
「何コレ……?」
「ツ、ツイスタ—ゲーム……?」

『この本が欲しくば……わしの質問に答えるのじゃー! フォフォフォ♥」

「ななな、石像が動いたーっ!?」

 ゴーレムってマジでRPGのダンジョンだな……
 しかし、この声どっかで聞いたような……・

『では第一問「DIFFICULT」日本語訳は?』

 そうして英単語ツイスタ—ゲームが始まった。
 始まった瞬間このちゃんに目を塞がれて、「しんちゃん、抵抗したらあかんえ」と言われた。
 だから俺は応援に徹している。
 そして最終問題となった。

『最後の問題じゃ「DISH」の日本語訳は?』
「えっ……ディッシュ……」
「ホラ、食べるやつー食器の……・」
「メインディッシュとかゆーやろー」
「落ち着いてやりゃできるぞー」
「わかった!『おさら』ね」
「『おさら』OK!!」

何故わざわざ難しくする?
『さら』でいいだろ!?

「お」「さ」「る」

「って、それじゃ『おさる』ですよー!?」

『ハズレじゃな』

 ゴーレムに足場を崩された。
 虚空瞬動で逃げるか?
 ……いや、さすがに皆を見捨てられない。

「木乃香ちゃん、離れないでね」
「うん。しんちゃん」

 そうして俺たちは図書館島のさらに深部へと落ちて行った。

第9話「ホレ薬で一騒動!」

side 真一


 今日もこのちゃん達と一緒に行く約束をしていたのだが、今日も遅刻寸前で絶賛ダッシュ中だ。

「全くもー、バイトも遅刻しちゃったし……ホントあんたなんか泊めんじゃなかった」
「えうっ、僕のせいじゃ……」
「仲悪いなー、二人。ウチらを少し見習うといいんよ」

 このちゃんに腕掴まれた。
 やわらかい何かが腕に当たっているが、意識するとやばいので今は気にしない。

「木乃香ちゃん、走り辛いって」
「ええやん少しくらい……減るもんやないし」
「アンタたち相変わらず仲いいわね。ごちそうさまです」

 腕は解放されたけど、今度は前方で二人が怪しい会話をしていた。


「いいこと? あんたの正体が魔法使いだって知っているのは私だけなんだからね。いい加減にしないとバラすわよ!! そしたら大騒ぎになって、あんたなんか魔女裁判で火あぶりよ火あぶり!」
「ええーっ!?」
「冗談よ。でも私に逆らうんじゃないわよ」

 魔法とか魔女とか聞こえるけど周りはみんな急いでるから聞いてないようだ。

「今日な、しんちゃんの分もお弁当作ったんやけど……」
「俺の分も作ってくれたの? 大変だったでしょ」
「今日はネギ君の分も作ったんやけど、三人も四人もあんま変わらんから大丈夫やよ」
「ありがとね。昼休みに広場とかでいいかな」
「うん。ウチらの分は三人分やから、アスナも一緒に三人で食べよ」

 ここの学食も美味いけど、やっぱ女の子の手料理は格が違うよなぁ……
 しかもこのちゃんの手料理なら間違いないしな。
 お昼が楽しみだな。
 そうして俺は皆と別れて男子中等部へと向かった。



side ネギ


「あの……昨日言った魔法のホレ薬はどうします?ホントに4か月でできますけど……」
「え……なっ……なな、なーに言ってんの!!」
「わぁっ」
「勇気がホントの魔法ってのはあんたが言ったんでしょ。自分の力で何とかするわよ」

 え、えらい!
 やっぱり見た目よりいい人だあ……
 アスナさんすごいなあ……
 僕も頑張らなきゃ!
 3月末までの間、立派に先生を務めて……
 おじいちゃんみたいな立派な魔法使いマギステル・マギになるんだ!



side 明日菜


「じゃあ1時間目の授業を始めます。テキスト76ページを開いてください。The fall of Janson the flower.Spring came.(以下略)今の所誰かに訳して貰おうかなぁ、えーと……」

 当たりませんように……
 って、何でこっちジッとみてるのようっ!

「じゃあ、アスナさん」
「何で私に当てるのようっ!? フツーは日付けとか出席番号で当てるでしょ!!」
「でもアスナさんア行じゃないですか?」
「アスナは名前じゃん」
「あと感謝の意味も込めて……」
「何の感謝よっ!?」
「……要するにわからないんですわね、アスナさん」
「なっ!?」
「では委員長のわたくしが代わりに……」
「わかったわよ訳すわよ。えーと、ジェイソンが……花の上に落ち……春が来た?(以下略)」
「アスナさん英語ダメなんですねえ」
「なっ……!?」
「アスナは英語だけじゃなくて数学もダメなんですけど……」
「国語も……」
「理科、社会もネ」
「要するにバカなんですわ。いいのは保健体育くらいで」

 もうっ!
 みんなして、そんなに言うことないじゃない……
 それもこれも全部コイツのせいだわ。

「あんたねえーっ! 朝あれほど私に逆らうなって、言ったのにぃ……」
「うひっ、うぷ……ハ、ハ……ハクション」
「うひゃあっ」
「な……何……今の風?」
「ちょ、アスナさん……何を突然、服を脱いでるんですか」

 ネギがクシャミをすると突然風が起こり、私の服が吹き飛んでいた。
 ななな、何でこーなるのよーっ!!
 このガキ……こっ、殺す!!



side ネギ


 はあー……
 また、アスナさんにひどいことしちゃった。
 あの後、授業中ずっとこっち睨んでたし……怒ってるよな~。


「あの、ネギ先生……」
「え……あ、はいっ!?」
「スミマセン。ネギ先生、朝の授業について質問が……」

 僕に話しかけてきたのは僕のクラスの子たちだった。

「あ、はいはい、いいですよ。えと……14番 早乙女ハルナさん」
「あ、私じゃなくてこっちの子なんですけど」
「……あれ? 宮崎さん、髪型変えたんですね。似合ってますよ」
「でしょでしょ!? かわいーと思うでしょ!? この子かわいーのに顔出さないのよねー」
「えっ……・あ……」
「あ!? 宮崎さんっ!!」
「あん、ちょっとのどかー。ゴメンネせんせー」

 宮崎さんは顔を赤くして走り去り、他の二人も宮崎さんを追って行ってしまった。
 何だったんだろ? 質問はいいのかな?
 うーん、ああゆう大人しい人ばかりだったらなー。
 それに比べてアスナさんは……ふうー、どーしよ。

 カランコロン。

 アスナさんについて悩んでいたら、ボクの鞄から何か落ちた。
 こ、これは……!?
 昔、おじいちゃんがくれた『魔法の素 丸薬七色セット(大人用)』!?
 お姉ちゃんが袋に入れてくれてたんだ!
 こ、これがあればホレ薬みたいなのを作れるかも!!
 よーし!!

『勇気がホントの魔法ってのはあんたが言ったんでしょ。自分の力で何とかするわよ』

 う……確かにこんなことで許してくれると思ってないけど……
 これ位しか、僕にはできることないし……

「ラス・テル・マ・スキル マギステル 『age nascatur potio amoris』!!」

 で、できた!!
 これを飲めば人間はおろか、あらゆる異性にモテモテに……
 アスナさん、きっと喜ぶぞ!!



side 真一


 今は昼休みで、俺はこのちゃんと明日菜さんとお弁当タイムだ。
 今日のお弁当は大き目のバスケット一杯のサンドイッチだ。

「遠慮せんでいっぱい食べてな」
「おお! 美味そう、いただきまーす」

 美味いなあ……
 やっぱ、このちゃんの料理ははずれがないな。

「私に遠慮しないで『はい、アーン』とかやってもいいからね」
「明日菜さん、そんなのやらないって」
「やらんの?」

 って、このちゃん何サンドイッチ片手に構えてんの?
 もしかしなくてもやる気だった?

「しんちゃん、アーンして」
「ほらほら、やっちゃいなよ」

『はい、アーン』はある意味男の夢……
ここは行くしかない!

「アーン」
「どうやろ? 美味しいかな?」
「美味かったよ」
「ホントにやるとわ思わなかったわ」

 明日菜さん……アンタが煽ったんでしょうが。
 くっ……このままだと、何時までも弄られそうな気がする。何か反撃できるネタが欲しいぜ。


 食事も終わり雑談していると、ネギ先生が明日菜さんと連呼しながら、こちらに向かって来ているのが見えた。

「アスナさん、アスナさーん」
「……また来たわね、ネギ坊主。何の用よ!!」
「実はできたんですよ、アレが!!」
「アレ?」
「ホレ薬です、ホレ薬」
「いらないって言ったでしょ」
「本当なんです!ダマされたと思って、ちょっとだけでも……」
「アンタが飲みなさいよ」
「はもご……」
「間違えてパンツ消しちゃうよーな奴の作ったモノなんて飲むわけないでしょ」

 明日菜さんがネギ先生の持ってきた何かをネギ先生へと飲ませた。
 苦しそうだったな。

「ホラ、何にも起こんないじゃない」
「あれ、おかしーなー」
「何のつもりか知らないけどね、そんなことじゃキゲン直さないわよ」
「や、やっぱりそうですよね。ゴメンナサイ……」
「ネギ君……ネギ君ってよく見ると……なんか、スゴイかわえーなー」
「ちょ、このちゃん!?」
「ん~♥」

 今俺の目の前で何が起こっているのだろうか?
 なんだか良く分からないが、このちゃんがネギ先生を抱きしめて、頬擦りをしている……
 え!? 何これ……

「このちゃん、何やってんの!?」
「き、効いてるーっ!!」
「明日菜さん! さっきネギ先生に何飲ませたんですか?」
「ええっと……信じて貰えないかもしれないけど、ホレ薬飲ませたの……」
「ホレ薬って、そんなのあるわけ……あるかもしれないな!!」
「って信じるの!? なんでいきなり納得したのよっ!!」
「まあそんなことより、現状を打開します」
「どうやって?」
「助けてくださいーっ」
「引きはがします!! 烈蹴斬! はああああっ!!」
「って、やりすぎよ。ネギ吹っ飛んだじゃない!?」
「ネギ先生、今のうちに逃げてください」
「はい、ありがとうございます」
「全然平気そうね……あいつ」
「まあ、手加減しましたからね。見た目ほど痛くなかったはずですよ」

 障壁あるだろうから大丈夫とは思ったけど、予想よりも全然平気そうだな。
 気は込めてないが半分本気だったのは内緒だ。

「このか、しっかりしなさい」
「あれ、ウチどうしたんやろ……何か頭ボーッとすんねん」

 明日菜さんが触れたらホレ薬の効果……魅惑チャームが解けた。
 何でっ!?
 そういえば、明日菜さんには効いてなかったな。
 何でだろ……魔法抵抗力が高いのか?
 でもそれだと触って効果が解ける理由が分からない。
 よく分からないけど、もしかしたら明日菜さんがネギ先生に触れれば効力が無くなるかもしれないな。

「木乃香ちゃん、保健室で休んだ方がいいよ。明日菜さん、お願いできますか?」
「いいけど、ネギはどうするのよ?」
「こっちで探してみます。木乃香ちゃんを保健室に預けたら応援に来て貰えますか?」
「わかったわ!! 見つけたら連絡ちょうだい」

 明日菜さんと別れ、俺は刹那へと連絡を取った。



side 刹那


 教室にネギ先生が来た瞬間何かの魔力を感じたので、咄嗟に抵抗レジストした。
 すると私以外の教室に居た人たちが先生に群がりだした。
 まあ雪広さんはいつも通りだが……

『刹那、聞こえるか?』

 念話?
 いつもなら携帯でかけてくるのに珍しいな。

『聞こえてます。何かあったのですか』
『今ネギ先生を探してるんだが見てないか?』
『ネギ先生なら教室に居ますけど、どうかしたんですか?』
『教室ってアホか!? 手短に言うけど、ネギ先生がホレ薬を飲んでこのままだと面倒なことになる』
『……よくわかりました。とりあえずここから逃がせばいいですか?』
『そうしてくれ。あと先生を見失わないようにしておいてくれ』
『了解』

 それじゃあ、混ざる振りをして逃がしましょうか……



side ネギ


 僕は何やってるんだ……
 ホレ薬の効果切れてないんだから、教室に何て逃げたらこうなるのは当たり前じゃないか。

「ネギくーん、ぬぎぬぎしましょうねー」
「ああー、やめっ、やめてくださいーっ」

 って、あれ動けるぞ……
 今だ……逃げよう!

「ネギ先生ーッ」
「わああー、誰か助けてーっ」
「え!?」
「あ、宮崎さん危ない!」
「ど……どーしたんですか?」
「そ、それが色々あってクラスのみんなに追われてて……」
「……それならこっちですー」

 助かったー……ここは図書室かな。

「ありがとうございます」
「いえ……鍵を掛けたのでしばらくは大丈夫だと……」

 これで少しはやすめるな

「……ネギ先生♥」

 え……
 宮崎さんも!?

「アスナさん助けてーっ」



side 真一


『ネギ先生は宮崎さんと図書室に入りました』
『了解』

 よし、明日菜さんに連絡を……

prrrr prrr
『真一君、今何処?ネギがたぶん図書室で本屋ちゃんに狙われてるみたいなの』
『今向かってる所です。もうすぐ着きます』



「明日菜さん!!」
「二人は中みたいなんだけど、鍵が掛かってるのよ」

『宮崎さん、ダメですよ。先生と生徒がこんなことしちゃいけないって、お姉ちゃんが……・』
『は、はい……そうですね……ゴメンなさいです』

「「蹴破るぞ(蹴破るわよ)!!」」
「こーの、ネギ坊主……」
「何やってんだよーっ」
「わーっ!アスナさん、真一さんあぶないですよ」
「全く……・世話がやけるわねー」
「ありがとうございます。助かりました」

 ネギ先生応えつつ離れて、刹那に連絡(念話はネギ先生にバレルから電話だ)を取った。

『刹那、他の子達の様子はどうだ?』
『どうやら元に戻ったみたいです』
『それなら良かった。詳細は後で教えるよ。とりあえず、ありがとな』
『いえ、では後ほど』

 どうやら予想通りホレ薬の効力が消えたらしいな。
 明日菜さん……本人は気付いてないっぽいけど何かの特殊な能力を持ってるみたいだな。
 一応頭に入れておくとしよう。

 こうしてバタバタした昼休みのホレ薬騒動は幕を閉じた。

オリジナルファンタジー作品掲載

当初の予定ではもう少し書き溜めてから、まずはなろうの方で投稿するつもりでしたが、ブログの方に掲載してみました。ゲームメインのブログになりつつありますが、本来は「SS置き場」の名が示す通り、私が書いた一次(オリジナル)・二次小説を載せるためのブログなのです! まあ今後もゲームの記事は書きますがねw

初めてオリジナル作品ということで結構真面目に設定を組みました。仲間との友情あり、バトルあり、恋愛要素ありな作品になる予定です。
今の所書き溜めは70KBほどで、文字数に直すと35000字くらいですね。ゲームばかりやってたので、GW前からあまり進んでないのですが、合間合間で考えていたので設定はより煮詰まりました。

処女作であるネギまSSの序盤と比べると、(自画自賛になるかもしれませんが)文章力の方もかなり向上していると思います。まあ粗が目立つのでネギまSSの方は多少加筆修正しながら掲載してる訳です。

誤字脱字等含め感想・質問などあれば気軽にコメントしてくだされば励みになります。

それではブログ掲載二作品目である「とある少女と剣の契約」をよろしくお願いします。

テーマ : 雑記
ジャンル : ブログ

PHASE1 始まりの刻

 如月冬夜は癖のない黒髪を靡かせながら月明かりに照らされた深夜の街を駆ける。それは決してランニング等の平和な行動ではない。この日も人に害をなす魔を祓うべくして、魔物を追いかけていた。

 魔物とは高い魔力を有し、異能を使う事の出来る人外の生物である。その中には高い知能を持ち人の生活圏に近づかない魔物も僅かに存在するが、大部分は本能に忠実で生きる糧として魔力を欲し人を襲う魔物であった。この人を襲う魔物を討滅するのも、冬夜達退魔師の仕事の一つだ。

 この日の討滅対象は四足歩行型の狼のような魔物で、かなり機動力の高いタイプの魔物であったが、ただただ魔物が逃げるのを追いかけているのではなく、適度な攻撃により魔物の行動を制限し狩り場へと誘導していた。

「爆ぜよ、氷の魔弾よ」

 冬夜が魔力を左手に収束させ、人族の異能――魔法を発動させる。冬夜の魔法、それは熱量を自在に操る『温度操作能力サーモニクス』。マイナス方向へ熱量を操り氷結の魔弾として放つ。そうして放たれた魔弾は狭い路地へ逃げ込もうとした魔物の行く手を阻むように地面に着弾させ冷気と氷をはらんだ爆発を引き起こす。魔物は爆発の衝撃によろめきながらも走り出す。
 冬夜は仲間との打ち合わせ通りに状況が進む事に、ついつい口元が緩む。油断禁物と気を引き締めて、作戦従い公園への誘引に集中する。

 今現在、冬夜が魔物を追い込んでいるのは、実の所本来の作戦とは異なる。今回の討滅依頼の獲物が最近天川市で噂になっている通り魔だと想定して、本来は逃げ惑いながら目標地点に誘い込むつもりでいたのだが、どうやら今回の魔物は違ったらしい。この魔物は一般人にとっては十分脅威なのだろうけど、退魔師として幼い頃から鍛えられてきた冬夜達にとっては脅威にはならない。その証拠に魔力の発露による威嚇のみで逃げ出した。対峙した時に感じた魔力から考えても弱い部類に入る魔物であるが、魔力による威圧だけで逃げ出すとは冬夜達も想定外だったため、作戦を変更して今回の追走劇に発展したという訳だ。

 そうして巧みに行動を妨害しながら公園まで魔物を追い込む。公園は深夜とはいえ、人一人おらず静まり返っていた。これは仲間が予め張っていた結界魔法の効力だ。本来魔法とは一人一人異なる異能であるが、体系化され訓練次第で誰でも使える魔法――法術の一種“人払いの結界”である。
 人の気配のない公園という異常な状況に気付く事のなく魔物は生存本能のままに目標地点へと誘導される。隠蔽され魔力を微弱にしか感じることの出来ない魔法陣の中へと。

「ナイスだ、冬夜! 紫電の枷よ、彼の者を捕らえよ“ライトニング・バインド”」

 魔物が魔法陣へと進入した刹那、声を発したのは冬夜の仲間。冬夜の幼馴染で、同じく退魔師の家系に生まれた『電撃使いライトニング・サモナー』藤堂啓介であった。
 啓介の魔力に反応して、淡い紫色の光を発しながら魔法陣が起動する。魔法陣から紫電の枷が現れ魔物を捉える。この魔法はただ対象を捉えるだけではなく、捉えた対象を電撃により麻痺スタンさせもがく動きすら封じることが出来る。案の定、今回の魔物も麻痺して動きが止まっていた。
 魔法陣の起動を確認した直後、冬夜は次の行動を起こしていた。家の蔵から持参した頑丈さだけが取り柄の無銘の刀を抜き放ち魔力を集中させ始めていたのだ。刀に氷結の魔力が宿り、冷気が吹き荒れる。

「一撃で決めろよ、冬夜!」
「ああ……氷刃アイスエッジ“飛燕閃”!」

 ライトニングバインドの効力圏へと入らないよう、高威力な間接攻撃を選択する。飛燕閃、それは飛翔する斬撃により遠距離にいる対象を斬り裂く強力な技であるが、今のは冬夜の異能により氷結の魔力が付加され、更に鋭さを増し強化されている。高速で飛翔する氷結の魔力刃は魔物の胴体をバターのように斬り裂き両断する。魔物を両断したとはいえ、その血飛沫が舞う事はない。それは胴体の断面が魔力刃の通過する瞬間に凍り尽き、やがて全てを凍り付かせてしまうからだ。
 麻痺していた魔物は断末魔を上げる事もなく断面から凍り付く。そして冬夜が刀を鞘に納めると、崩れ去り跡も残さずに消滅してしまった。魔力を用いる戦闘において、その生命を散らした者の末路は消滅である。その為、今回の魔物も消滅してしまったのだ。
 魔力の痕跡を解析する法術も存在するが、一般的な法術ではなくその使い手はあまり多くはない。

 魔物の消滅を確認した冬夜達は依頼の達成を喜び合っていた。

「やったな。流石、決める所はしっかりやってくれるよな」
「まあな。仕留めそこなって、また逃げられたら面倒だしな」

 二人はハイタッチし、依頼達成の充足感を味わう。
 この依頼というのは、冬夜達が通う学園で二人が所属している部活――魔法研究同好会に舞い込んだ依頼であった。この部活は建前として『魔法の運用方法について研究する』と言う名目で設立された同好会であるが、実際の活動は何でも屋である。本来は冬夜と啓介の他に二人部員がいるのだが、今日は予定が合わず二人だけで動いていたのだった。
 今回の依頼は、下校時やバイト帰りに被害にあったという生徒からの依頼で、学園の近くに出現する何者かを何とかして欲しいという話だった。被害者は鋭い爪の様な物で傷付けられていたため、天川市で噂になっていた通り魔の凶器と一致し、噂の通り魔の犯行の可能性があると警戒していたが、結果的にその警戒は徒労に終わった。もし本物の通り魔であったら、たった二人では戦力不足だったかもしれない。でも退魔師として育てられた二人には、この依頼を放置することは出来なかった。それで戦力不足は否めなかったが、作戦を立てて討伐に乗り出したという訳だ。
 互いの家を通した正規の依頼ではないから報酬は出ない。敢えて言うなら、依頼者の「ありがとう」の言葉が報酬である。それでも、魔法研究同好会に偶に入る討伐依頼は実戦経験を積める貴重な依頼であった。そう言う訳で全くメリットがないというモノでもないのだ。

 お互いの状況を確認し合い、互いに怪我がないことが分かると啓介が帰宅を提案する。

「さてと、明日も学校あるし、帰ってさっさと寝ようぜ」
「ああ。そういや明日は全員部室に集合って、京花さんからメール着てたな。何すると思う?」
「あ~、俺にもそんなメール着てたな……また何かの思い付いた魔法の実験とかだったりしてな」

 啓介は冗談めかして、そう言ってはいるが内心現実になりませんようにと祈っていた。冬夜はというと、明日を想像して早くもげんなりしていた。

 冬夜と啓介の幼馴染二人組は、依頼を達成できた充実感とは裏腹に明日の放課後の平穏を祈りげんなりしながら帰路へと着いたのだった。


◆◆ ◆◆ ◆◆ ◆◆


 冬夜達の依頼遂行の二日前。
 ――リーベルタース、神族の勢力圏『エザフォース』と魔族の勢力圏『ウラノース』の境界付近――

 人が隠れる事のできる岩の多く岩石砂漠に近い景観の荒野に、エザフォースを目指して追っ手から逃げようとしている三人がいた。一人は魔族の男性、一人は神族の女性、もう一人は二人の子供であろうハーフの少女。長い銀髪を風に揺らしながら走る少女――彼女の名前はリア・アークライト。迫り来る追っ手は彼女を狙っていた。魔族の父親から受け継いだ特殊な魔術を欲しているのだった。

 神族と魔族。二つの種族は時代を遡ると、その起源は同じエルフ族である。時が経ちエルフ族は自然と調和を重んじる『ハイエルフ』と、純粋に強い力を欲する『ダークエルフ』に分かれた。
 『ハイエルフ』は、その自然と調和を重んじる性質から精霊と対話できるようになり、精霊と契約し精霊の力を借りる精霊魔法を使えるようになった。更には元々エルフ族が使えた回復・強化・防御に特化した異能は、異能の存在が一般に広まっていなかった頃の人族にとっては正に神の御業であったために、いつしかそれは神術と呼ばれるようになる。そして神術を使うハイエルフは『神族』と呼ばれるようになったのだ。
 一方、『ダークエルフ』は、より強い力を求めて高い魔力を有する魔物に目を付ける。そして異種姦を繰り返し、その魔力を強めていった。その過程で多種多様な容姿と固有の異能――魔術を持つ部族が生まれ、その末裔が『魔族』と呼ばれるようになったのだ。

 閑話休題。
 三人はエザフォースに向けて走っていたが、少しずつリアが遅れだす。それも当然である。何の訓練も受けていない16歳の少女が追われているという状況に耐えられるはずもなく、徐々に精神的に追い詰められていたのだ。

「パパ、ママ……奴らは私を狙ってるんだよね。だったら私を置いて逃げて! 私がいたら逃げ切れないよ……」

 岩陰に身を隠し、身体を休めながらそう言う。
 リアは自分が足手まといだという事を嫌と言うほど分かっていた。これまで生きてきた16年で幾度となく襲撃され、その度に両親に助けられてきた。二人だけなら撃退もできるのだろうけど、自分を守るために最低限の反撃しかせずに逃げ続けた。
 最近はエザフォースで暮らしていたため平穏無事に過ごせていたが、幼い頃から可愛がってくれた叔父さんからパーティーの招待状が届き、それに参加したいとわがままを言ってしまったのが、今回の襲撃に繋がってしまった。
 そんな自責の念の囚われながら、自分を構わないよう両親に告げる。しかし、我が子の自己犠牲をするような発言を許容するはずがない。

「馬鹿を言うな。リア、お前を此処に置いて行く位なら、俺一人が囮になるっての」
「ハイハイ、貴方も馬鹿な事言ってないで、早く逃げましょう。エザフォースはもう直ぐそこなんだから」
「でも……パパとママは本当は凄く強いって叔父さんが言ってたよ。私が居なければ、あんな奴ら位敵じゃないんでしょう?」

 そこまで言った所でリアに拳骨が落ちた。「痛ーっ」と頭を抱え、涙を滲ませながら父親――ゲイル・アークライトを見上げる。

「もう変なことを考えるのは禁止だ!」
「パパ……うん、ゴメンね」
「さて、話も纏まった事だし、逃げましょうか。ちょっと待ってね。風精よ、“探査せよ”」

 そう言うと、彼女の母親アリス・アークライトの身体が淡い緑の光に包まれる。そう、これが神族のみが行使できる力。契約した精霊の力を借り行使する精霊魔法である。
 数秒後、光は収まる。アリスは難しい顔をしていたが探査の魔法は成功したようだった。

「まずいわね。徐々に包囲されつつあるわ。私に気付かせずに此処まで動けるなんて、かなりの実力を持った魔人が指揮しているみたいね」

 魔人。それは強大な魔力を有する魔族である。一般的な魔族から恐れられながらも尊敬されている存在である。魔人と言っても、その戦闘能力は玉石混交であるが、今回追ってきている集団のリーダーはそれなりに強い力を持つ魔人だと推察される。
 ゲイルはアリスの報告を受けて、目を瞑り思考を始める。逃げ切るには如何すればいいのか、その答えを見つけるために。それでも、この状況において、三人共が揃って窮地を脱する方法はないに等しい。
 僅かな可能性があるとすれば、それは最後の手段である。ゲイルは首に掛けた十字架をモチーフにした首飾りに願いを込めるように握り締める。そして、その首飾りを外し、リアの首へと掛ける。

「これは……?」
「貴方まさか!?」
「戦況は不利だ。アリスお前も分かっているだろう。三人共生き残るにはこれしかないと……。“解放レスト”」

 その呪文を呟いた直後、リアを中心に魔法陣が展開される。

「何これ? どうなるの?」
「リア、良く聞きなさい。今、お前に渡した首飾りは魔法具マジックアイテムだ。一度限りだが、もう一つの世界【コンウェニエンティア】へのゲートを開く事が出来る物だ」
「そうなの!? じゃあ、早く一緒に逃げようよ」

 ゲイルは静かに首を横に振ると、リアの両肩に手を乗せ言い聞かせるように話しかける。

「これは、このゲートは一人用なんだ。だからリア、首飾りを身に着けたお前一人しか通ることは出来ないんだ」
「何それ……? やだよ。三人一緒がじゃないとやだよ」
「リア、ゴメンね。今はこうするしかないの。必ず向かえに行くから」
「今離れても、心はいつも一緒だ。それにパパ達と離れるが、世界の何処かにはパートナーがいる。信頼し合い困難に立ち向かっていけるパートナーが。だから探しなさい。お前なら見つけられるさ。パパとママの娘なんだから」

 リアは二人の真剣な表情を見て、三人無事にこの状況を乗り切るためには、本当にこの手段しかないのだと悟る。いつまでもわがままばかりを言って、二人を心配させてはいけない。そう思って、目に溜まった涙を拭い笑顔を見せる。

 自分が泣いたままで別れたら二人に無駄に心配を掛けてしまう。そんなのは嫌だった。だから今この時だけでも笑顔で。

 リアの笑顔を見た二人は少し安心すると共に、我が娘の成長を嬉しく感じていた。
 そうこうしている内にゲートが起動する。ゲートの起動とともにリアの位相がずれる。今はもう触れることもできない。それでもまだ言葉は届く。

「リア、必ず迎えに行くからな」
「元気でね。頑張るのよ」
「うんっ! でも、あんまり遅いと私が探しに来ちゃうからね」

 二人はリアの言葉に思わず笑みを浮かべる。『さよなら』は言わない。何故なら、これは今生の別れではないからだ。だから『またね』。そんな再会を誓う言葉で別れる。
 そう告げて、手を振っているとゲートは完全に閉じる。一瞬の静寂の後、小石が転がる音が辺りに響く。

「おいおい、リア・アークライトは何処だよ。最後に位置を確認したときには包囲寸前だったはずだ。まさか……」
「魔人、アラン……」

 アラン・クレーデル。黒衣で身を包み、赤い長髪が逆立つ程の強い魔力を放っているその男は魔人の一人である。強硬派の一派の一員で非常に好戦的で危険な人物だ。

「まさか貴方が指揮官?」
「ハッ。そんな訳ねぇだろが。うちの大将のことも知ってるんだろ?」
「そうだよな。見事な包囲作戦だったからお前が出てきて驚いたぜ」
「見下してんじゃねえぞ。セラ、魔力痕を解析しろ!」
「アラン様、既に解析済みです。どうやらゲートを起動したようです」

 セラフィム・アインハルト――セラと呼ばれた魔族の女騎士は、この場に来た直後から解析を始めていたらしく、アランの指示が出るとすぐさま報告した。
 普通、簡単には魔力痕からの解析は出来ないのだが、このセラという魔族はいとも簡単に解析して見せた。彼女こそアランの副官であり、その実力は一介の魔人と比べても遜色ない程であった。

「面倒な事をしてくれたな」
「何の事か分からないな」

 例えバレていたとしても、本当の事を教えてやる義理はないとゲイルは恍けてみせた。ほとんど効果がないのは分かってはいるが、アランの陣営にはゲートが存在しないはずなので、当分の時間は稼げたと安心していた。
 しかし、その予測は裏切られることになる。

「ここに居ても仕方ないな。セラ、ゲートは使えたよな」
「はい、数日後には使えるはずです」
「貴方達の一派にはゲートはないはずよね」
「ああー。公式にはそういうことになってたな。そういや……」

 その言葉に二人は愕然としてしまう。
 ゲートを使わなかったら今此処で捕らえられていた可能性が高かったであろうから、ゲートを使ったのは間違いではなかった。でも、たった数日の猶予しかないのであれば、自分達が迎えに行く前にアラン達がリアの元へと辿り着いてしまう。この事実により、二人は決断を迫られる。アランの上の魔人に報告される前に、この場の魔族達を討滅するという決断を。

「ゲイル、殺るわよ。此処で叩き潰す」
「ああ。お強いのが来る前に片してしまおう」

 アリスとゲイル、二人の身体から魔力が溢れ、はっきりと視認できるほどの濃密な魔力光はやがて眼が眩むほどの閃光となる。光が納まった時、そこには契約の騎士の姿があった。

「それが噂に聞く契約魔術マギアコントラクトゥスの正体って訳か」
「ええ、そうよ。若い魔人とはいえ、私の異名くらいは知ってるんでしょう」
「“銀の閃光”……」
「良く出来ました。でも残念だけど、“さようなら”かな。あの娘がいたから反撃しなかったこと位分かってるんでしょう。さあ踊りなさい!」

 戦いが始まる。その時、岩山の上にもう一人の魔人が姿を現した。この魔人の乱入により戦況は魔人側へと傾く事になる。そして、アリスとゲイルの二人はこの戦いにより行方不明となるのだった。

 一方、リアは無事にもう一つの世界【コンウェニエンティア】に辿り着き、運命の歯車はゆっくりと廻り始めようとしていた。



種族:人族、神族、魔族の三種族が存在する。
魔物:大部分は魔力を糧に人を襲う存在。
異能:魔力を原動力に行使される神秘の力。誰でも使う事が出来るが、その特性・強度は人によって様々である。
魔法:人族の異能。応用の効くバランスの良い力が多い。
神術:神族の異能。防御・強化・回復などの補助に特化する傾向がある。
魔術:魔族の異能。攻撃及び戦闘に役立つ力が多い。
精霊魔法:精霊と契約することにより行使が可能になる神族のみが扱える力。

簡易用語集的な物を載せてみましたが要らないかも知れません。

テーマ : 自作小説(ファンタジー)
ジャンル : 小説・文学

「とある少女と剣の契約」目次

《あらすじ》
 隣り合う二つの世界――人族の住む世界『コンウェニエンティア』とエルフを起源とした二つの種族、神族と魔族の住む世界『リーベルタース』は近くて遠い異世界であり、自由には行き来できない。世界を移動するためには、基本的に特別なアイテムを使用するか、世界に数箇所あるゲートを通るしかないのだ。

 その二つの世界に生きとし生けるもの、その全てには魔力が宿っている。魔力――それは個人個人に秘められた異能を使うための動力である。異能は誰でも使える物であるが、その能力は同じ人族でも千差万別である。日常生活に役立てられる程度の強度の能力しか持たない者もいれば、その類まれな強度の異能を駆使して人に害をなす魔を祓う者達もいる。しかし祓う者がいれば逆に強大な力を有し魔を操る者達もいる。今は小さな火種だが、思想が異なり互いに相容れない限り戦いの連鎖を断ち切ることはできないのであろう。何か切欠があれば崩れてしまう。世界はそんな危うい均衡状態を保ちながら一見平和に時を刻んでいた。

 これはそんな世界に生まれた二人、人に害をなす魔を祓う退魔師の家系に生まれた少年――如月冬夜と、神族と魔族のハーフに生まれた少女――リア・アークライトの出会いから動き始める運命の物語である。



PHASE1 始まりの刻
PV
来客数
プロフィール

アイン

Author:アイン
小説家になろうでも活動中のアインです。趣味で書いた小説をまったり載せていきます。

よろしくお願いします。

最新記事
カテゴリ

openclose

フリーエリア
「創刻のアテリアル」応援中!
月別アーカイブ
最新コメント
リンク
検索フォーム
最新トラックバック
RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。